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「4月初旬から、うちの病院で新型コロナウイルスの中等症患者を受け入れています。現在、6人が入院中で20人まで受け入れる態勢を作っていますが、防護服もマスクも数週間分しかない。まるで、竹やりで戦争に挑んでいくようなものですよ。これじゃ、患者の命を救えないどころか、私たちも感染して命を落としかねません」

 

そう訴えるのは、千葉県内の総合病院で働く看護師のAさん(40代)。中等症とは、4リットル以内の酸素吸入が必要と判断された感染者のこと。

 

Aさんが勤める病院では、3月から院内に“発熱外来”を設置。保健所から依頼があったコロナ疑いの患者に対し、PCR検査を行い、検体を保健所に送る作業を行ってきた。4月下旬から、病院の外にプレハブを設置して検査するという。

 

「3月は陰性ばかりでしたが、4月に入って陽性が増えています。うちの病院は感染症指定病院ではないので、入院患者を受け入れることはしないと思っていたんです」

 

しかし、3月末の医局の朝礼で、突然、こう発表があった。

 

「地域の感染症指定病院がコロナ患者で満床になったので、中等症の患者を受け入れてほしい、と保健所から要請がありました」

 

中等症であっても、人工呼吸器が必要な重症に移行する可能性がある。現場は受け入れ準備で大混乱に陥った。

 

「コロナ病棟を作るために、療養型病棟に入院中の、生活に医療や介護が必要な患者、約40人をほかの病棟や、他院に転院してもらいました」

 

転院してもらうのも大変だったが、いちばん大きな問題は、患者が重症化したときの対応をどうするかだった。

 

「その病棟には、現在、人工呼吸器を1台設置する準備をしていますが、最大でも4台までしか置くことができません。病院側は、『重症化するようなら他院に搬送する』と言いますが、重症患者受け入れ病院も満床で受け入れられない可能性が高い。そうならばうちの病院で人工呼吸器を装着するしかないのですが、コロナ病棟には何人もの呼吸器装着患者を看るだけの人員は配置されていない。結果、一般病棟で看るしかなくなるのか……」

 

コロナ病床を担当する医療スタッフの確保も難航している。

 

「そもそも、この間、病院側は国の医療費削減政策に基づいて、スタッフの賃金を大幅にカットしていました。その結果、3月までに大量の看護師が退職し、人員不足が加速化していたんです」

 

そこにやってきた、コロナ禍。

 

「病院側は、目を付けた看護師に対して、脅しのようにコロナ病棟への勤務を要請しています。『あなたが断ったら、シングルマザーの○○さんが代わりに行くのよ』と言われたと聞きました。にもかかわらず、補償や手当などはいっさい決まっていません。もし感染して亡くなったとしても『労災申請してください』というような態度なんです」

 

家族への感染リスクも考え、コロナ病棟に引き抜かれるのは、主に小さい子どもがいないスタッフだ。

 

「私は4歳の子どもがいるからか、まだ声はかかっていません。でも、小学生の子を持つ看護師が志願したと聞きました。家族に感染させないために、しばらくは自宅に帰らず、病院が借りたアパートから通うそうです」

 

「女性自身」2020年5月5日号 掲載

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