保育園を止めないためにも、今後の検査の拡充を願う。(※写真はイメージです) 画像を見る

全国の保育園で新型コロナの感染事例が相次いでいる。しかし、その後の検査体制には自治体ごとにバラつきがあり、検査対象となる“濃厚接触者”の特定に対して不安視する声が上がっている。

 

厚生労働省が1月13日に公表した資料によれば、これまで全国903か所の保育所等で感染者が発生し、感染者数は職員929人、乳幼児731人にのぼるという(1月7日午後2時時点)。

 

都内の保育園の職員は次のように不満を募らせた。

 

「うちの園ではまだ感染者は出ていませんが、同じ区内で去年12月に園児1人の感染が判明した園では全園児と職員が一斉検査をしました。しかし、1月に園児の感染が判明した別の園では、保健所が『子どもは感染しにくい』『マスクをしていたら濃厚接触者ではない』と判断して、全園児の検査をしてもらえませんでした。1月に入ってから、知る限りでも区内の3施設で感染者が出ていますが、似たような状況です。

 

幼い園児に感染対策を徹底させることは不可能だし、職員はマスクをしているとはいえ、園児とは常に濃厚接触状態です。保健所のキャパシティの問題だと思いますが、必要な検査が十分に行われているとは思えません。うちでもいつ感染者が出てもおかしくない状況で、出ても検査すらしてもらえないのかと思うと非常に不安です」

 

ツイッターでも検査の不十分を訴える保護者の声が多く上がっている。

 

《保育園で園児が陽性出て居るのにその日に居た園児、先生らは検査しない意味がわからん! 濃厚接触の定義の小さな物差しでしか検査してないじゃん!》
《保育園の保育士さんがコロナ感染しました。同僚の保育士の濃厚接触は明らかなのに、同じフロアーで保育した方のみ検査でき、他は濃厚接触の定義から外れるから検査しないそうです! これが積極的な検査か?》

 

濃厚接触者の特定は、保健所や施設状況によって異なるだろうが、濃厚接触者に特定されなかった関係者から後日、陽性が判明する事例が増えているのも事実だ。

 

川崎市議の市古次郎氏も18日、ツイッターで次のように指摘。

 

《コロナ陽性者が出た市立学校、保育園の保護者の方からは濃厚接触者、検査対象者の特定について「ホントにこれで大丈夫なの?」という声が多く寄せられます。事実、市内保育園では最初検査対象外とされた方が数日後に陽性が判明し2度目の臨時休園に。速やかに検査対象の拡充を実施するべきです》

 

一方で、PCR検査の拡充に力を入れている世田谷区の保育園の園長は次のように話す。

 

「うちの園では職員1人が陽性と判明し、園児も含め全員が濃厚接触者と認定されて検査しました。結果、職員2人と園児1人の新たな感染を見つけることができました。区が検査に力を入れているので、その辺は徹底されていました」

 

全国的にも保育園で感染者が出た場合に一斉検査を行なっている自治体も多い。検査の範囲が自治体によってこれほど違うのはどういうことだろう。とある自治体の保育所を管轄する課の職員は次のように苦しい本音を語る。

 

「自治体によって対応に差があることは承知しています。うちでは保健所の指示で濃厚接触者を特定して検査しているので、一斉検査は行われていません。保健所の検査のキャパシティの問題だと思います。専門的な考えがあることは理解はしていますが、保護者からも検査の徹底を希望する声は多いです。本音では、できれば全員受けてほしいと思っています」

 

全国紙記者はこう語る。

 

「『子どもは感染しにくい』と言いますが、昨年7月には都内の保育園で園児20人、保育士2人の大規模クラスターも発生しています。また、子どもは重症化しにくいとはいえ、新型コロナは無症状でも人に感染させるリスクがあるということは初期から指摘されていたこと。気付かぬうちに子どもが家庭内に持ち込んで、高齢者へ感染を広げるリスクもあります。

 

1年前と違い、一斉検査をしている自治体も増えました。検査体制が不十分な自治体は、“濃厚接触者”という都合のいい定義に甘んじず、積極的に検査体制の拡充をしていく必要がある思います」

 

保育園は、本当にそれを必要とする人が利用している。保育園を止めないためにも、今後の検査の拡充を願う。

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