私の知り合いにこういう方がいらっしゃいます。その方は実に堅実で慎重。仕事ぶりもしっかりしている、誠実で信頼の置ける方です。でも、ひとつだけ残念に思っていることがあります。それは私が何か提案したとき、はなから「それは無理です」とおっしゃることがとても多いのです。そして、どうして出来ないのかという理由をいくつも並べて説明されるのです。確かに専門的な立場や過去の経験を照らし合わせて考えると、無理なことなのかもしれません。でも、そのたびに、何故こうも頭から否定してしまって、できない理由ばかりおっしゃるのかと、ガッカリするのです。

とうてい出来そうもないことでも、とにかくトライしてみる。最善の努力をしたうえで、「これは出来ない」という結論に達したのなら、それは致し方のないことです。でも、はじめから「出来ない」と決めつけて、その理由を探すようなことばかりしていてはいけないのですよね。大きな幸運を手に入れたかったら、周りが無理だと言おうがなんであろうが、とにかく突進して頑張ることが大切だと思っています。

偉そうなことを言ってしまいましたが、実は若い頃、私もその方と同じでした。特に10代の頃など、「出来ない」という言葉をよく使い、その理由をあれこれ並べ立てたのです。そのたびに母から「お母様は、出来ないという言葉が大嫌いよ!」と叱られ、必ずこのように母は付け加えました。「為(な)せば成(な)る、為さねば成らぬ何事も、成らぬは人の為さぬなりけり」と。これは江戸後期の米沢藩主、上杉鷹山(うえすぎようざん)の歌がことわざになったものだとか。これを信条としていた母はすでに他界しましたが、私の心と体にはこの「為せば成る」がしっかり染みついているのです。