ところで、ラピスラズリの神々しい青色は、日本では「群青色(ぐんじょういろ)」といい、群青とはラピスラズリを砕いた高価な絵の具の顔料として知られています。また、「瑠璃色(るりいろ)」も群青色と等しくラピスラズリの青色を指しおり、この「瑠璃」こそがラピスラズリの和名なのです。

前々回にラピスラズリは古代エジプトではファラオに贈る石として珍重されたとお話ししましたが、上記のように日本でも「瑠璃・るり」と呼ばれて、大切にされてきました。なんとあの有名な日本真言宗の開祖・空海(弘法大師 西暦774-835年)は、この瑠璃(ラピスラズリ)を守護石にしていたと伝えられています。

ではいったい、ラピスラズリはどのようにして、日本に入ってきたのでしょうか。アフガニスタンなどで産出されたラピスラズリは、イランで加工技術が発達。エジプト、ギリシャ、ローマ、中央アジア、中国、朝鮮という経路で奈良時代の日本に伝わり、パワーのある石として認められるようになりました。その証拠に瑠璃(ラピスラズリ)は、仏教の七宝(金・銀・瑠璃・琥珀・シャコ・珊瑚・瑪瑙の七つの宝石)のひとつとされていたのです。なんでも、阿弥陀如来が支配する極楽浄土の大地や木々、池などはこの七宝でできているとか。

さらに、薬師如来が治める浄土・東方浄瑠璃世界は瑠璃……つまり、ラピスラズリの世界だというのです。また、薬師如来の正式名は「薬師瑠璃光如来」で、瑠璃(ラピスラズリ)の中には、薬師如来の力が存在するとも言われます。この薬師瑠璃光如来には、人々を病気や災難、あらゆる苦しみから救う力があり、ラピスラズリにも、世界の様々な地域で、同様のパワーがあると伝えられてきたのです。

Stone_070312 それでは、ラピスラズリの締めくくりに、この石をブレスレットなどのアクセサリーとして身につける場合の心得を一言申し上げておきましょう。前回の標本画像と比べていただくとお分かりのとおり、実は、ラピスラズリはもともと多孔質の鉱物で、表面にはほとんど光沢がありません。ところが市販されているラピスラズリには光沢があります。これは石をより美しく見せるために、ワックスや樹脂でコーティング加工が施されているためです。ただ、ちょっと問題なのは、長期間にわたって手首などにはめていると、汗などでそのコーテイング剤が剥げて、色が褪せた状態になる場合があることです。

しばしば「ラピスラズリは色が変わることがある」「それは身に危険が迫ったことを知らせるしるし」といった解説がありますが、これは前記のような事情によるものですから、あまり神経質にならないでくださいね。また、ラピスラズリは、しっかりコーティングされた状態でも、コーテイングが剥げてしまっても、ラピスラズリのパワーには何ら問題はありません。