突然、「セレナイト」と言われても、どんな石なのかお分かりになる方は少ないと思います。でも、この石は、実は「石膏(せっこう)」の仲間と聞けばぐっと身近な存在になるでしょう? 「石膏(せっこう)」そのものは、あらためて説明するまでもなく、絵画のデッサンに使用する石膏像の素材であったり、建物の漆喰壁の原料であったり、あるいは骨折をしたときなどに患部を固定するギプスであったりしますね。

でも、採掘された「石膏(せっこう)」は、そのままでは石膏像や建物の漆喰、ギプスの素材としては使用できません。石膏に約300℃くらいの熱を加えると、「焼き石膏」というものができますが、これに水を加えると、石膏は見事に再度固まるという性質があります。このことは、なんとローマ時代の人々がすでに知っていて、建築材料としてさかんに利用していたのです。現在でも、世界で採掘される石膏の75%が焼き石膏として利用されているそうですから、「石膏」は実に人類の歴史とともにある貴重な鉱物の一つなのですよね。

Stone_080115ところで、私たちが知っている、いわゆる「石膏(せっこう)」は不透明な白色で、写真のような透明度のあるガラス質のものではありません。ということは、同じ「石膏(せっこう)」でも「セレナイト」はちょっと違った種類であるということなのです。セレナイトに付けられた和名を知れば、そのことは一目瞭然です。「セレナイト」の和名は「透石膏(とうせっこう)」と言います。文字通り「透明な石膏」を意味していますね。そうです、「セレナイト」は「石膏(せっこう)」の中でも無色透明の鉱石につけられた名前です。しかも、「セレナイト」は一方向に割れる性質(劈開性)があります。そのため、大きなサイズの「セレナイト」は板状に割ってガラス板として使用したと言われ、その美しさは「聖母マリアのガラス」という異名を生むほどだったようです。

ここで、「石膏」と「セレナイト」の名称に関する整理をしておきましょう。「石膏」は英語名で「Gypsum(ジプサム)」と言い、この言葉は「チョーク」、「漆喰(しっくい)」、「セメント」を意味するギリシャ語の「Gypsos」に由来するそうです。また冒頭に例示しました「ギプス(Gips)」は、実はドイツ語で「石膏」を意味する言葉です。では「セレナイト(Selenite」)の名称の由来はと言えば、ギリシャ神話の月の女神・セレネ(selene)からきています。「セレナイト」を透して見る光は、まさに月の光を思わせるような神秘的な輝きに満ちていたということかもしれませんね。

次回は、「セレナイト」の様々な結晶とパワーストーンとしの魅力をご紹介しましょう。「砂漠のバラ」と呼ばれる結晶は「これぞ神様の手による芸術!」と感嘆したくなるような造形美ですよ。ぜひ、お楽しみに!