「アイオライト」は透明感のある美しい青紫の石です。色が美しいだけでなく、モース硬度も7~7.5あるため、宝石としてもなかなか人気があります。ところが、この石には大変おもしろい特徴があります。見る角度によって色が違って見えるという、いわゆる「多色性」がある鉱物なのです。1813年、フランスの地質学者、ピエール・コルディエが最初にこの石を紹介したことから、鉱物名は「コーディエライト(cordieraite)」と言います。でも、一般には「アイオライト」(一部文献では「イオライト」)と呼ばれています。
この「アイオライト(Iolite)」という名称は、紫色を意味するギリシア語の「ios」と、石を意味する「lithos」に由来するそうですから、「アイオライト」とは「紫色の石」という意味ですね。一方、和名は「菫青石(きんせいせき)」と言います。この耳慣れない「菫青石」という名称を分解しますと、行き着くところは同様に「紫色の石」ということになります。つまり、「菫」は音読みでは「キン」、ただし、訓読みでは「すみれ」。「すみれ色」というのは「すみれの花のような濃い紫色」ということです。これに「青」という一文字が追加されていますから、「菫青石」は「青紫の石」ということになり、「紫色の石」という英名よりさらに繊細な名称となっています。
Stone_080219ところが、「アイオライト」は「紫色の石」、「青紫の石」という名前が強調されているため、冒頭でご紹介しました「多色性」という特徴が忘れられ、「アイオライトと言えば青紫の石だ」と思われがちなんですね。青紫以外のアイオライトを示しても、これは「アイオライト」ではないのではないかと言われる方も少なくないようです。そんなわけですから、この際、アイオライトの「多色性」のヒミツを知っておきましょう。
「多色性」という現象が起こる原理はこうです。鉱物の中を光が通過する際、ある波長の光が吸収されると、その反対色の波長が強調されるという性質があります。「アイオライト」をある角度から90度方向を変えて見ると、色が変わってみえるのはそのためです。例えば、青っぽく見える角度のときは、黄緑色の波長の色が吸収されている状態で、その逆に、黄色っぽく見える角度のときは、青紫色の波長の色が吸収されている状態です。したがって、「アイオライト」は「青紫」だけではなく「黄緑色」の場合もあれば、「灰色」や「無色」に近い場合もありますよ。
でも、何と言っても「青紫色」が一番美しいことから、「アイオライト」は宝石に仕立てられる際には、石そのものが「青紫色」に見える角度が正面となるように計算され、カットされているのです。リングやペンダントに仕立てられる際は、黄緑色に見えるサイド部分は地金によって隠されているので、一般には「アイオライトは青紫の石」と思い込まれているのですよね。ですから、地金にセッティングされていないルースの「アイオライト」を観察すれば、青紫以外の色も確認できますよ。
では、次回はアイオライトのパワーストーンならではのお話をいたしましょう。