この石の鉱物学的側面をご紹介するためには、この石の化学組成に立ち返える必要がありそうです。なぜなら、「カーネリアン」と呼ばれる石には、同じ化学組成ながら、ちょっとした組成プロセスの違いによって、いくつかの異なった分類がなされているからです。皆様がよくご存知の「メノウ(瑪瑙)」も同じ仲間ですし、「クリソプレーズ」といわれる緑色をした石も同様です。

Stone_080415「カーネリアン」の化学組成は「SiO2」、つまり「二酸化珪素(にさんかけいそ)」ですが、これはまた水晶の化学組成とも同じです。では、同じ化学組成の鉱物がどうして水晶のような鉱物になったり、カーネリアンのような鉱物になるのでしょうか。ちょっと不思議ですよね。私の知る範囲では、地中の岩石の隙間に流れ込んだ二酸化珪素を含んだ熱水が、徐々に冷えると石英の結晶が生まれます。これが水晶と呼ばれる鉱物です。一方、同じ二酸化珪素を含んだ熱水が火山岩の隙間で冷え、顕微鏡で見なければわからないような微小な結晶を形成すると、「カルセドニー」と呼ばれる別の鉱物が誕生します。

「カーネリアン」はこの「カルセドニー」のグループに属した石なのです。このことは和名を比較してみると、なるほどと納得できますよ。「カルセドニー」の和名は「玉髄・ぎょくずい」。一方、「カーネリアン」の和名は「紅玉髄・べにぎょくずい」と言って、同じ「玉髄」なのですね。さらに「玉髄」は、組成物質の沈殿の違いや鉄分などの元素の多少によって、色や模様が異なってきます。「カーネリアン」はこの「玉髄」の中でもオレンジ色から赤に近い単一の色のものを指し、縞模様のあるものは「メノウ(瑪瑙)」、英名「アゲート」と呼びます。ただ、最初に触れたように緑色の玉髄の場合は、「クリソプレーズ」と呼んで分類されています。

ところで、元となる「玉髄・カルセドニー」は不透明の白色であるのに、「カーネリアン」は何故オレンジ色をしているのでしょう。それは、石に微量な「鉄分」が含まれているためで、「酸化鉄」によって、赤く発色しているというわけです。でも、写真で見るとお分かりのように、採掘されたカーネリアンの原石はそれほど濃い色ではなく、淡いオレンジ色です。にもかかわらず、カーネリアンのカット石は、とても濃いオレンジ色なのです。次回その写真をご紹介しますが、どうしてそんな濃い色になると思われますか? 実は、薄い色であるカーネリアンの原石に熱を加えることによって、鉄分の酸化を促進。朱色を増すという人為的な処理が施されているのです。インドなどでは、採掘したカーネリアンを太陽光にさらして色を濃くしているとも聞きます。鉄分の酸化促進という化学変化の利用は、長い長い歴史の中で会得したインドの人々の知恵なのかもしれませんね。

「カーネリアン」は紀元前の王墓からも発掘される古いパワーストーンです。次回は「カーネリアン」に秘められた不思議なパワーについてお話しましょう。