「アパタイト」という石をご存知ですか? 「アパタイト(Apatite)」は英名ですが、この名前の由来はさておき、まずは「燐灰石(りんかいせき)」という和名に注目しましょう。この名称は、実は、同一の結晶構造でありながら含まれる化学組成が異なるカルシウムリン酸塩鉱物のグループ名です。主な鉱物としては、フッ素を主成分とする「フッ素燐灰石(ふっそりんかいせき)」、塩素を主成分とする「塩素燐灰石(えんそりんかいせき)」、水酸を主成分とした「水酸燐灰石(すいさんりんかいせき)」があります。でも、鉱物としていちばんポピュラーなのは「フッ素燐灰石」だということです。

Stone_080520この「フッ素燐灰石」は「燐(リン)」の主要な原料であるため、世界的に重要な鉱物資源となっています。ここでちょっと寄り道ですが、擦って火をつけるマッチの漢字表記をご存知ですか? 「燐寸」と書きます。マッチの歴史を調べると紆余曲折いろいろ面白いことがあるのですが、とりあえずマッチには「燐灰石(りんかいせき)」から採れる「燐(リン)」が使われているのです。

また、もうひとつ興味深いことがあります。それは、人間の骨や歯の主成分が、なんと燐灰石なのです。地球の内部で生成された鉱物と同じ組成のものを人間は自身の体内で生成しているのですよね。「えっ!? 人間自身が体内で鉱物と同じ物を生成って、それって何!?」と、ビックリされたでしょう? それはこういうことなのです。自然界にはフッ素と結びついたフッ素燐灰石は当たり前に存在します。でも、人間が食べる食物中にはフッ素はほとんど含まれていません。そこで、人間の体はどのようにしているかと言えば、体の中に豊富にある水酸イオンを使用して水酸燐灰石をつくっているのだそうです。

ただし、鉱物の「フッ素燐灰石」と人間の骨や歯の「水酸燐灰石」を比べると、フッ素燐灰石のほうが硬度が高く、丈夫であるとのこと。そのため、成形外科や歯科ではこのフッ素燐灰石を人工骨や義歯の材料として利用することがあるようです。このようなことから「燐灰石=アパタイト」は、私たちの生活の中で、大いに利用されている鉱物資源だということが分かりますね。

さて、英名の「アパタイト(Apatite)」からこの石のもうひとつの特徴を明かしていきましょう。この「Apatite」の語源は、ギリシア語の「apate」であるとされています。ところが、その意味はというと、これが「裏切り」、「ごまかし」、「トリック」といったちょっと有り難くないものなのですよね。何故この石には、こんな妙な名前がつけられたのでしょう? それには、次のような理由があります。

「アパタイト」という石は、色といい、光沢といい、他の石や宝石と実によく似ているのです。特にアクアマリン、アメシスト、かんらん石とはほとんど見分けがつきにくいほどだと言われています。これだけ似ているのは、逆に言えば、「アパタイト」がガラス光沢で透明感があり、黄、緑、青、紫、無色、白、紅といった多彩な色調を持っているということです。ただし、「アパタイト」は硬度が5という中間的な硬さであるため、宝石としての価値はあまり高いとは言えません。でも、中にはジュエリー品質の美しい石もあり、けっこう多くのファンがいるようです。

次回は、「アパタイト」のパワーストーンとしての魅力をお話ししましょう。