「ペリドット(Peridot)」は比較的ポピュラーな石。この石の名称を聞くだけで、「あゝ、あの緑色の石ね」と思い起こされる方も多いでしょう。では早速、この石のプロフィールを少し詳しく見てみましょう。まずは、「ペリドット」の英名スペル「Peridot」に注目してください。これは「ペリドット」によく似た緑色の石でエピドート(Epidote)という鉱物があるのですが、ギリシア語では「Epidotos」と表記されます。最初の頭文字「E」が欠落すると「Pidote」、「Pidotos」となり、それがさらに「Peridot」に変化した、いわゆる「異綴語」ではないかというのが今日の定説となっています。

Stone_081008 ところで、「ペリドット」の日本語名はと言うと「橄欖石(かんらんせき)」となっています。ところが、英名の「ペリドット」というのは、実は鉱物名ではなく宝石名なのです。鉱物名は「オリビン(Olevine)」です。これは石の色がオリーブ色をしていることから付けられた名前なんですね。なるほど英名の「ペリドット」とは関係のなさそうな「橄欖石(かんらんせき)」という和名がつけられた理由が分かりました。すなわち、「オリーブ=橄欖(かんらん)」という関係からでしょう。

ただ、残念ながら、「オリーブ」と「橄欖(かんらん)」は、よく似てはいるものの全く異なった植物なのです。ですから、決して「オリーブ=橄欖(かんらん)」ではないんですね。では、何故このようなことが起こってしまったのでしょうか。これは、鉱物名「オリビン」を和訳する際に、オリーブとよく似た「橄欖(かんらん)」を当てはめてしまった、つまり誤訳なのだそうです。ちなみに、広辞苑で「橄欖」と引くと「オリーブを橄欖と誤訳するが、全く別種」との記述があります。でも、別の辞書で調べみると、「橄欖=オリーブ」と表記されているのです。この現実は、オリーブを橄欖と言い、橄欖をオリーブと言う常識がけっこうまかり通っている証拠かもしれませんね。

名称にまつわるエピソードでずいぶんと回り道をしてしまいましたが、鉱物名「オリビン(Olevine)」はと言うと、これは「橄欖石(かんらんせき)」のグループ名。この中には「ファルステライト」(苦土橄欖石:くどかんらんせき)や「ファイアライト」(鉄橄欖石:てつかんらんせき)があります。通常、私たちが目にする緑色の「ペリドット」は「苦土橄欖石」のほうで、「鉄橄欖石」は黒色をしており、産出量も少ないそうです。

では、「ペリドット」の美しい緑色はどこから来ているのでしょうか? 石そのものは「マグネシウム」と「珪酸」からできていますが、そこに微量の鉄分やニッケルが含まれることによって緑色に発色します。鉄分とニッケル分の含有量の違いによって、同じ緑色でも、黄色にシフトした黄緑色のものから、やや茶系にシフトした帯褐緑色までいろいろあります。

硬度も6.5~7とジェムストーンとしての十分な硬さをもっていることから、紀元前3500年以上も前から人類と関わりがあります。ときに護符として、ときに装身具として綿々と利用されてきました。そして、今日のジュエリーやパワーストーンの世界でも、「ペリドット」は地味ながら安定した人気を保っているのです。

次回は、「ペリドット」の歴史上の挿話を訪ねながら、パワーストーンとしての特徴、効用についてお話ししましょう。

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