韓国のある大物軍人が書いた論文の日本語訳がネット上で広まり、大きな波紋を広げている。流布している翻訳文のタイトルは「2016年以降は日本と戦争になる、敵を破壊しなければならない」である。

 

だが、「原文には『戦争になる』の文言はない」(韓国在住のジャーナリスト)というように、論文の原文とネットで流れた日本語訳には微妙なニュアンスの違いがある。論文のタイトルの直訳は「日本の独島武力挑発のシナリオ」。「日本の独島(竹島の韓国名)に対する侵略的な野心が執拗になっている」との文言で論文は始まる。

 

執筆者は韓国の在郷軍人会諮問委員で元海軍作戦司令官・予備役海軍中将の金成萬(キムソンマン)氏。金氏について、元韓国国防省北韓分析官で拓殖大学客員研究員の高永チョル(コウヨンチヨル)氏はこう語る。

 

「私の元上司です。保守中の保守の論客で、北朝鮮には強硬姿勢で挑むというのが基本的な考え方。海軍トップの参謀総長になるともみられていた優秀な先輩です」

 

論文は、韓国の防衛を米韓が共同でおこなう米韓連合司令部の体制下では日本は独島侵奪を試みることができないので、日本の武力挑発は統制権が韓国軍に移管後の’16年以降だと予想している。日本の“武力挑発”のシナリオはこうだ。

 

「日本の右翼が複数の船舶に分乗して、奇襲的に独島に上陸。それを保護する名目で、海上保安庁の巡視船と海上自衛隊の艦艇が出動する」

 

だが、日本に対し、韓国海軍は3分の1の戦力しかないと危機感を煽り、海上戦力の充実、さらには原子力空母と原子力潜水艦の必要性を説いている。そして、十分な戦力を確保するまで、米韓連合司令部の解体(’15年12月1日)を延期することも一案であるという結論に至る。

 

 

自衛隊が右翼と結託して、竹島奪還をおこなうというシナリオは荒唐無稽、まさに噴飯ものだが、当の論文は大真面目に日本の脅威を論じている。なぜ金氏は日本を仮想敵にして挑発してくるのだろう。前出の高氏は「日本を挑発しているわけではない。国内向けだろう」と語る。

 

「保守右派としては、愛国心を煽ることで、国防力増強をやりやすくする狙いがひとつ。米韓連合司令部の解体以降、韓国だけの戦力では弱いので、戦力を強化しなければいけない。その場合、独島問題はいい理由づけになるのです。さらに南北統一の後は、周辺国の日本、中国、ロシアに対抗するために、海軍力の増強が必要だという考えをアピールさせる狙いがひとつ。つけ加えるなら、陸軍の地位が高い韓国で、海軍の発言力を高めるという思惑もあるのではないかと思います」

 

ちなみに、万が一戦争になったら?

 

「戦争しても、海軍力は日本が韓国の3倍、空軍力も2倍ですから、成り立たない。日本側が、東シナ海と済州島近海に2個艦隊を配備して、海上封鎖すれば、オイル、貿易品がシャットアウトされ、1カ月封鎖したら、韓国は油と戦争物資も食糧もなくなり、何もできない最悪状態に陥ると思います」(高氏)

 

(週刊FLASH 10月1日号)