「生産を増やすことに大きな力を入れ、人民の生活により多くの恩恵が行き届くようにしなければならない」


これは”敬愛する金正恩元帥”の新年の辞だ。首都平壌は巨大な遊園地やイルカショー、スケートリンクの施設、高層ビルなど建築ラッシュ。北朝鮮は発展し、人民もその恩恵を享受していると見えなくもない。だが、そんな平壌のすぐ南西部に位置する黄海道で大飢饉が発生。少なくとも1万人以上の死者が出ていると、先月28日、アジアプレスが公表した。現地住民は次のように話していたという。


「昨日は6世帯、今日は5世帯というように、毎日バタバタと死んでいきました。飢えで全滅した一家もあれば、生きていくことに絶望して、家族皆で自殺した家もあります」(農村幹部)


そして労働党幹部の口から出たのは、誰もが耳を疑う衝撃発言だった。


「チヨンダン郡のファヤンリという村では、空腹でおかしくなった親が子を釜茹でして食べて捕まる事件がありました」


今回、アジアプレスは黄海道の住民6人に直接取材している。驚くべきことに、この6人全員が、自ら見聞きした人肉事件について証言したのだ。そのうちの1人はこう語っている。


「子供2人を殺して食べようとした父親が銃殺になりました。家に戻ってきた妻に『肉がある』と勧めたのですが、子どもの姿が見えないことをいぶかしんだ母親が警察に通報すると、軒下から子供たちの遺体の一部が見つかったそうです」


今回の飢饉のピークは昨年の4月から5月にかけて。死亡率が1割を超えた農村もあり、少なくとも1万人以上が死んだ計算だ。北朝鮮各地で起きた旱魃や大雨の影響が大きいと表向きはなっているが、「真実は違う」とアジアプレスの石丸次郎氏は言う。


「今回の飢餓は明らかに金正恩デビューにともなう莫大な浪費によるものでした。新指導者のデビューに『軍に配給もない』では体制が保てない。それで穀倉地帯である黄海道に負担を強いたんです。銃を持った軍人が脱穀所から食糧をすべて奪取した目撃談や、上部からの命令でノルマを課され、暴力で奪わざるをえなかったと語る地方の党幹部などの証言が少なくありません」


絶対権力者を肥え太らせるために、まじめに働く農民が食糧を奪われ飢餓地獄をさまよう。それが北朝鮮の現実なのだ。


(週刊FLASH 2月19日号)