先だって、目の不自由なセーラーと太平洋横断に挑戦したとき、「もし自分が死んだときに周りの人間がどうなるか?」を真剣に考え、遺言状を書いたという辛坊治郎氏(57)。「そのとき考えたんです。遺言状を書くっていう行為は、死ぬ準備じゃなくて生きるための行為なんだって」。そんな辛坊氏は、“生きるための知恵”として、遺言状を書くことを推奨する。

 

「皆さんも想像してください。あなたが突然死んだときに、遺された家族はいろんな手続きで困りませんか?あなたの親が死んだときに、親の財産状況を把握していますか?とくに問題なのは、相続人が複数いる場合です。さらに、相続人が自分たち兄弟姉妹だけだと思っていたら、父親が家庭の外でも子供を作っていて、その子供が『私の取り分も頂戴』なんて言ってきたらどうなるか?こりゃエライことになりますよ〜!

先ごろこの相続問題で、極めて重要な判断を最高裁判所が出しました。今まで、『親が家庭の外で作った子供の相続分は、結婚している夫婦の間に生まれた子供の半分』っていうのが民法の決まりでした。ところが最高裁は、『この規則は法の下の平等を定めた憲法14条に違反して無効だ』って言うんです。こりゃ一大事です。

じつは、男女間の倫理にうるさいキリスト教国では、長い間『家庭の外で生まれた子供は相続権がなくて当然』でした。ところがフランスなどでは、『両親が法的に結婚しているほうが珍しい』っていう時代になり、ここ20年くらいの間に平等な相続権を認める方向に制度が変わって、対応の遅れた日本に国際的な批判が集まる事態になっていたんですね。

最高裁の判例が出たことで、国会で法律が改正されようがされまいが、今後は婚外子の相続分は、ほかの子供と同額になります」

 

これらの裁判は、遺言状さえ書かれていればほとんどは防げたはず、と辛坊氏は語る。

 

「あまり知られていませんが日本の場合、遺言状で完全に自由にできるのは、自分の財産の半分までです。妻は、法定相続分の半分は法的に確保できます。夫婦の間に生まれたじつの子供がどんなに嫌いでも、特別な理由がなければ、法定相続分の半分はくれてやらなくちゃなりませんが、遺言さえ書いておけば、残りは全部『愛人の子供』に遺すこともできるんです。

ところが日本で問題なのは、欧米各国のように、この遺言状が一般に普及していないことです。ぜひ皆さん、明日と言わず今日にも遺言状を書いてください。べつに難しい手続きは要りません。自筆で全文を書いて、日付を記し、署名捺印しておけば法律的には100%有効です。

そんなこんなで私、4カ月ほど前に初めての遺言状を書いたんですが、その後人生の悩みがひとつ消えました。今までは、「もし自分が突然死んだときに、残された家族は手続きひとつでも大変だろうな」って心配していたんです。ところが遺言状には、死んだ後のあれやこれやの段取りをわかりやすく書いておきましたから、遺族は何も困りません。雑事に煩わされずに悲しみに集中できます。

皆さん、遺言状を書きましょう。現在の自分の置かれている諸々の状況を整理して見つめ直すのに、これほどいい手段はありません」

 

(週刊FLASH 11月5・12日)

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