「この提言は、小学校から大学までの教育全体を変えていくことにつながると考えております。まさに大胆な発想、そして丁寧な進め方が重要だと思います」

 

10月31日、安倍首相は官邸で開かれた『教育再生実行会議』でこう挨拶した。安倍首相が言う『提言』の内容は、『記憶力中心の受け身の学力』だけでなく、『課題を発見し探究していく力』を育てるために、大学入試を次のように改善するというものだ。

 

1・センター試験を廃止

2・『基礎レベル』と『発展レベル』の2段階の『達成度テスト』を導入し、何度か挑戦できるようにする

3・高校時代の『達成度テスト』の成績を、大学入試に大幅に反映させる

 

センター試験をわざわざ廃止して、新しい試験を取り入れるのはなぜか。文部科学省でこの問題を担当する高橋道和氏は次のように語る。

 

「大学改革は、入口(受験)と出口(入学後の教育)の両方セットでやらないと意味がないんです。大学に入ってからビシビシ教育してもらおうというのが提言の大きな柱のひとつですが、出口が厳しくなるなら、入口には幅を持たせたほうがいい。それで、1点刻みの入試を改めることにしました」

 

また、少子化や入試の多様化も大きな理由だと高橋氏は続ける。

 

「少子化で高校生の数は極端に減り、誰でも大学に入学できる時代に突入しています。入試制度が多様化したいま、一般試験を受ける生徒は約半分。高校生にとって大学受験は学びのインセンティブにならないので、最低限の知識を身につけるためにも、高校版学力テストを設けたんです」

 

じつは、これまでも文科省は人物重視の試験を導入しようとして失敗した過去がある。「基本的な学力を見るため、’79年に共通一次テストが始まりました。このときも、二次試験では可能な限り学科試験を減らそうとしたんです」と話すのは代々木ゼミナール入試情報センター本部長の坂口幸世氏。

 

「それで、東北大学の文系は二次試験で数学を、理系は英語をやめたのですが、結果的に学生の質が大きく下がりました。医学部の二次試験で論文と面接しか課さない大学もあった。その試験で入学してきたのは物理や化学を高校で履修しない文系の生徒たちばかりで、大学側は非常に苦労したといいます」(坂口氏)

 

『ゆとり教育をやめる』と言いながら、勉強に価値を置かない文科省。過去の例から見ても、今回の試験制度の導入でバカ学生が大量発生することは必死なのだ。

 

(週刊FLASH 12月3日号)