売春をしても見逃す警察。本土では死刑もありうる重罪なのに、ある島では公然と許されている――中国には、人民解放軍が直営する“売春島”が存在するという。日増しに風俗規制を強めている中国において、そんなことがありうるのだろうか。世界の風俗事情に詳しいライターの奥岳氏が解説する。

 

「下川島ですね。あの地域は中国人民解放軍の管轄になっています。裏を返せば、本土の警察の手が及ばない地域です。もともと、下川島は海軍の前衛基地として機能しており、香港とマカオに出入りする艦船の監視をおこなっていました。’97年と’99年、両島がイギリスとポルトガルから中国に返還され、役割を終えたのです」

 

この土地をどうするか。マカオをお手本に、カジノを中心としたレジャーランドにする案が浮上した。

 

「ホテルを一気に十数軒作りました。しかし、施設を誘致する段階になって、中国共産党の本部からクレームが入り、カジノ計画は頓挫したのです。当然、作ってしまったホテルをどうするかが議題になりました。きれいなビーチがあるので、リゾート地として観光客を集められる目算はありましたが、知名度がない。そこで、“売春島案”が浮上。風俗業者を呼び寄せ、街のいたる所に置屋を作ったのです」(奥岳氏・以下同)

 

中国共産党の指導を受ける人民解放軍管轄のため、いくら売春がおこなわれていても、本土の公安(中国の警察)は一切、取り締まれないという。

 

「島にも、公安はちゃんといますよ。治安維持など最低限の役割は果たしますが、いわゆる売春についてはノータッチです。女のコと2人で外で歩いているときにお巡りさんとすれ違っても、咎められることはありません」

 

本土の公安は手出しできないのだ。だが、一度抵抗を試みたことがある。

 

「じつは3年半ほど前、中国本土から下川島に渡る港のチケット売場を閉鎖させたことがありました。本土の公安が何人も並んで、3日間ほどブロックしたのです。下川島内で直接取り締まることができないため、港で売春島への入口を塞いだわけです。中国ではニュースにもなりました。そのときは、軍と本土の公安が話し合いをして、ブロックは解除されました。逆にいえば、入口を塞ぐ行為しかできないと判明し、本土の手が及ばない島であると証明されたのです」

 

公安すら手を出せない“売春島”。街は置屋だらけだという。

 

「全部で、島内に(置屋が)50軒くらいあります。店を回ってみると、『ウチは雲南省出身が多い』などの特色が一軒一軒にあります。レストランで男のみで食事をしていると、横の置屋から女のコが出てきて、平気で誘ってくることもありますね。ただ時期によっては規制が敷かれることもあります。外国人選手を誘致して、ビーチバレーの中国大会を開催したことがありました。そのときは女のコたちに『外に出て勧誘しないように』というお達しが出たそうです」

 

中国本土は売春に対して厳しい。だからこそ、人民解放軍直営ともいえる下川島が唯一の“安全地帯”となっているのだ。売春島はある意味、現代中国の拝金主義をもっとも体現した場所といえるだろう。

 

(週刊FLASH 6月3日号)