「現行法は罰金400万円だけど、漁具と船体の没収は今だって可能なんです。万引きが多い店で『見つけたら厳罰にする』と言ったって、摘発できなかったら意味がない」(一色正春・元海上保安官)

 

小笠原や伊豆諸島の沖合で赤サンゴを獲りまくる中国漁船。先週、政府は無許可操業に対して罰金を3千万円に引き上げる方針を決めた。尖閣に人手を取られている海上保安庁は、赤サンゴ密漁に対して、為す術はないのだろうか。

 

「そんなことはありません。じつは、海保は10月初め、小笠原で操業中の中国漁船に対し、特殊警備隊SST(Special Security Team)を出動させ、漁船員を横須賀に連行しているんです。SSTとは、テロリストなど、凶悪犯を取り締まる特殊部隊です。全管区の特別警備隊のなかから選ばれた精鋭部隊です。」

 

こう語るのは、フォトジャーナリストの柿谷哲也氏だ。SSTが誕生したのは’96年。関西国際空港の「海上警備隊」と、プルトニウム輸送船を護衛する「輸送船警乗隊」が合併して組織された。アメリカ海軍の特殊部隊「シールズ」の指導を受けた日本最強の部隊である。

 

「SSTが最強といわれる理由は、ヘリコプターからロープを垂らして完璧に目標地点に降下できることです。リペリングといって、一見簡単に見えますが、できる人は非常に少ない。また、失敗が許されない現場で、確実に犯人を射止める訓練も積んでいる」(柿谷氏)

 

SSTの訓練はとてもハードだという。相手の船まで泳いで行き、水中から船に乗り込む訓練。目に見えない細菌に対応するため、防護服を着たままの訓練。さらにシージャック船からの救出、接近戦、偵察訓練などが課されている。中国語や韓国語など、語学の習得も必須だ。

 

「1班8名態勢だとして、チームのなかに必ず救急救命士が含まれているのも特徴です。いざというとき、負傷した人間の治療ができる」(柿谷氏)

 

SSTがいれば、海上防衛は安泰にも見えるが、事はそう単純ではないと東海大学の山田吉彦教授は話す。

 

「中国ではもうすぐ1万トンクラスの巡視船ができる。これは一種のヘリ空母で、機動力が飛躍的に向上する。日本も対抗できる機動力を持たなければなりません」

 

海保は、来年を目途に沖縄の警備態勢を大きく増強する。だが、押し寄せる中国船に対し、抜本的な解決にはほど遠いのだ。

 

(週刊FLASH12月 2日号)

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