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7月21日午後7時、東京ドーム一塁側に陣取った東芝社員たちは肩を組み、応援に力を込めた。この日は都市対抗野球1回戦。連呼される社名と「TOSHIBA」のプラカード。優勝7回を誇る名門・東芝野球部が負けるわけにはいかない。都市対抗野球は、東芝グループの結束力を高める恒例行事。かつて野球部で活躍し、今年も応援に訪れた社員が言う。

 

「毎年、役員も応援に来てましたよ。VIP対応で特別な通路から入ってきてね。でも今年は役員は1人も来てないみたい。社員は、今回の不祥事のストレス発散に来ているんです」

 

無理もない。試合開始の2時間前。東京・浜松町の東芝本社では、田中久雄社長(64)らが、体を90度曲げ、陳謝していた。社長及び佐々木則夫副会長、西田厚聡相談役の3人の社長経験者の辞任を発表する異例の事態。東芝は関連企業を含めれば従業員20万人以上、売上高6兆5千億円超、時価総額1兆6千億円超の大企業だ。

 

「有利子負債も1兆4千億円あるため、どんなに悪質な会計不正でも、金融市場の混乱を考えれば、上場廃止なんてできない。企業責任としては、金融庁が科す金融商品取引法違反(有価証券報告書等の虚偽記載)の課徴金処分が落としどころとされています」(ジャーナリスト・松崎隆司氏)

 

だが経営陣には、司直の手が入り、事件化される可能性が残る。さらに田中社長らには、株価急落の責任を追求する株主集団訴訟も待っているだろう。東芝の不正会計処理が“第2のオリンパス事件”と呼ばれる所以である。そのオリンパス事件をスクープしたジャーナリストの山口正義氏が言う。

 

「米国では、東芝の株主集団訴訟を呼びかける弁護士事務所のHPも開設されました。オリンパス事件では、刑事事件で有罪になった元社長らに、オリンパスと株主がそれぞれ賠償訴訟を起こし、いまでも延々と続いています」

 

そして、本誌は気になる情報をキャッチした。東芝の田中久雄社長による“財産隠し疑惑”である。

 

JR京浜東北線の鶴見駅から徒歩10分の場所にそびえたつ14階建ての高層マンション。とある階にある1室は不動産鑑定業者によれば「市場価値でいえば約4,150万円」の物件だ。持ち主は長らく田中社長だった。だが、今年の3月上旬、田中社長の妻と思われる人物に贈与されているのだ。オリンパス事件でも、元社長が損失隠しの発覚後に、保有するマンションなどを家族名義に変更し、損害賠償訴訟を見越した“財産隠し”と報じられている。

 

東芝に「財産隠しの意図はなかったのか?」と問うと、田中社長みずから広報・IR室を通じてこう回答した。

 

「昨年から検討してきた件で、3月7日に手続きを完了しました。築20年弱のマンションであり、都心物件でもなく、資産価値は低いと考えています」

 

だが……。前出の山口氏が言う。

 

「東芝による不正会計の内部情報が、SEC(証券取引等監視委員会)に提供されたのが2月上旬とされています。田中社長は当然、知りえた立場。そのうえで3月上旬に名義変更をしている。時期的には財産隠しと受け取られても仕方がないでしょう」

 

都市対抗野球1回戦は、東芝の完勝だった。観戦した社員が言う。

 

「上層部の人間は、自分を守ることしか考えていなかったんだと思います。取締役・相談役計9人が辞職することになったけど、社員にとってはよかった。20万人いる従業員も、きっと新たな気持ちでやっていきたいはず」

 

辞任会見で田中氏は自身の姿勢を正当化するような発言を続けた。20万人の声は届いていない。

 

(週刊FLASH8月11日号)

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