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本誌のドキュメンタリーページ『シリーズ人間』に登場し、「あのキレイだけど押しの強い弁護士はナニモノ?」と、巷をにぎわせた仲岡しゅん弁護士。その正体は、男性として生まれ、数年前に女性に「トランス」した男と女のハイブリッド弁護士!大阪生まれ、大阪育ちの若き闘士は、悪を許さぬ正義感と、美貌に似つかぬ義理人情を盾にして、法律を武器に日々奮闘中。そんなハイブリッド弁護士がトラブルをシュッと解決!

 

【今回の相談】「出勤途中の駅のホームを歩いていたときのことです。友人から届いたLINEを読んでいたら、私を追い抜こうとした男性のバッグが手にぶつかり、買ったばかりのスマホが落下、壊れてしまいました。ぶつかってきたのは、駅でよく見かける男性。彼に修理代を請求できますか?」(30代女性・会社員)

 

【回答】「それよりも、通勤時の歩きスマホは危険。まずは、ご自分の行動を省みることですわ」(仲岡しゅん)

 

通勤客がぶつかってきてスマホが壊れてしまった、という今回のご相談。まず、相手に不法行為(民法第709条)が成立するかどうかが問題となりますね。

 

不法行為というのは、故意、または過失によって、他人の権利、または法律上保護された利益を侵害すること。平たく言うと、わざと、あるいは不注意から、誰かの権利を侵害してしまうことです。そしてその場合、被害者は、それによって発生した損害の賠償請求ができるのです。

 

たとえば、お隣さんの窓ガラスをわざと割った場合に修理代を払うのは当然ですが、「過失」、つまり不注意で割ってしまった場合でも、賠償責任が生じます。窓ガラスを割られたお隣さんは、貴女に修理代を請求することができるわけです。

 

さて、その論理でいくと、今回のご相談のケースも、わざとかどうかはさておき、ほかの通勤客がぶつかってきた結果、貴女のスマホは落ちて壊れてしまったわけです。当然、修理代を請求できるように思われるかもしれません。

 

ですが、今回のご相談のケースが発生したのは通勤時の駅。通常、大勢の人が行き交う環境です。この状況下で利用客同士がぶつかることは想定内であり、先方に過失があったとは言いきれません。つまり、不法行為が成立しない可能性が高いということです。

 

また仮に、相手の不注意が認められ、不法行為が成立する場合であったとしても、「過失相殺」で賠償金が大幅に減額される可能性もあります。

 

この「過失相殺」というのは、民法第722条2項で「被害者に過失があったときは、裁判所はこれを考慮して、損害賠償の額を定めることができる」と定められているもの。被害者側にも何らかの落度があった場合に、その分だけ、賠償金が減額されるという法律です。

 

大阪のオバちゃん的に言えば「アンタにもアカンところがあってんから、相手にだけ払わしたる、いうんはおかしな話やろ。せやから、このくらいの金でガマンしとき!」といったところでしょうか。

 

だって、貴女も朝のラッシュの駅で、歩きスマホをしていたわけでしょう。誰かとぶつかる可能性のある場でリスキーな行為をした貴女にも非があるということです。

 

つまり今回のご相談は、不法行為が成立するかどうかがまず微妙、さらに成立したとしても過失相殺となり、全額賠償は難しいと思われます。

 

それよりも、通勤時の歩きスマホは、貴女にとってもほかの乗客にとっても危険な行為。ついやってしまいがちですが、他人をも危険に巻き込むことのある、自分勝手な所業ですのよ。まずは、ご自分の行動を省みることですわ。わたくしだったら、そうします。

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