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男性として生まれ、数年前に女性に「トランス」した男と女のハイブリッド弁護士・仲岡しゅん氏。大阪生まれ、大阪育ちの若き闘士が、みなさまのトラブルをシュッと解決!


【今回の相談】「隣家が10年間空き家で、危険です。強風で壊れた建材がわが家に飛んできたこともあり、現在の所有者である前家主の息子に何度も処置を依頼しましたが、無視されています。大雪が降れば確実に倒壊しそう。わが家に被害が出る前にこちらで補強したいのですが、かかった費用を所有者に請求できますか?」(50代男性・会社員)

 

【回答】「勝手に他人の持ち物に対して手を加えることは、通常できません」(仲岡しゅん)

 

今回のご相談、まず原則的なことを言いますと、補強や補修ができるのは、あくまでも自分のモノや、自分が管理しているモノだけです。つまり、勝手に他人の持ち物に対して手を加えることは、通常できません。

 

まあ、当然といえば当然です。頼んでもいないのに誰かが貴方の家を勝手に改装しはじめたら「はぁ? 何を勝手なことしとんの?」となりますわよね。同じことですわ。

 

しかし、民法の中には、他人の持ち物に対して承諾なく手を加えたのに、その費用を後から請求できるという、珍しい規定があるのです。それが「事務管理」です。民法697条1項には、次のように書かれています。

 

《義務なく他人のために事務の管理を始めた者は、その事務の性質に従い、最も本人の利益に適合する方法によって、その事務の管理をしなければならない》

 

毎度、法律の書き方はわかりにくいので、具体例を挙げてみましょう。

 

お隣さんが海外旅行中に地震が起き、隣家の窓や扉が壊れてしまいました。放っておけば、泥棒が立ち入ることができ、危険です。そこで、お人よしな貴方は、お隣さんから頼まれてもいないのに、業者を頼んで窓やドアを補修してあげました。

 

このようなケースで、貴方が業者に支払ったお金は、お隣さんにとって“有益な費用”となります。よって、貴方は後からお隣さんに請求することができる、というわけです。

 

ところが、この「事務管理」、場合によっては「余計なおせっかい」になることもありえます。そこで民法697条2項では、「管理者は、本人の意思を知っているとき、又はこれを推知することができるときは、その意思に従って事務管理をしなければならない」とされています。

 

つまり、本人が望んでいないことが明らかな場合には、事務管理ができないわけです。

 

では、今回のご相談の場合はどうでしょう。文句を言っても隣家の持ち主が無視し続けていることから、持ち主は補強を望んでいないと推察できます。つまり、貴方が隣家の補強をしても、その費用は請求できないということになってしまいます。

 

しかし、近年、こういった空き家問題が多発しています。そこで、’15年に「空き家対策特別措置法」という法律が施行されました。これは、そのまま放置してしまうと危険・有害な空き家については、市町村が持ち主に助言・指導や勧告を行い、それでも従わない場合には、撤去などの措置を取ることができるというものです。

 

せっかく法律ができたのですから、隣家に対処するよう、まずはお住いの市町村に相談してみてはいかがかしら? 勝手に他人のモノをいじくると、後々ややこしい問題に発展するリスクがあることは、貴方も重々おわかりでしょう。わたくしなら、正攻法でまいります。

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