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男性として生まれ、数年前に女性に「トランス」した男と女のハイブリッド弁護士・仲岡しゅん氏。大阪生まれ、大阪育ちの若き闘士が、みなさまのトラブルをシュッと解決!

 

【今回の相談】「5歳からお年玉をちょきんしてました。お母さんがずっと僕の口座に貯金してくれてたはずなのに、この前、通帳を見たら『0円』でした。お母さんに聞くと、セールでブランドのコートを買っちゃったって。『お母さんのドロボウ!』と泣いたら『子どものものは親のもの!』だって。お母さんをうったえたいです」(小学3年生・男子)

 

【回答】「子どものものは、子どものもの」(仲岡しゅん)

 

今回の論点は、子どもの貴方のそのお年玉、貴方自身のものなのか、それとも親のものなのか、というところです。

 

結論から言うと、貴方のお年玉は、貴方自身のものです。たとえ児童であったとしても、「財産権」の主体にはなれます。親にあるのはあくまで「財産管理権」ですから、「子どものものは親のもの!」なんていうジャイアニズムは、法的には通用しませんのよ。

 

では、お年玉が貴方自身のものであるとして、それを勝手にお母さんが使ってしまうことは、犯罪になるのでしょうか。

 

今回の場合、お母さんの行為は、厳密に言えば「横領罪」にあたります。ところが刑法には、「親族相盗例」(刑法244条、255条)というものがあり、家庭の中で“盗った・盗られた”という問題は、処罰の対象外と成ります。ですから、刑事事件にはできません。

 

では次に、貴方がお母さんを民事裁判で訴え、お金を返してもらうことができるかをみてみましょう。

 

まず、裁判をするためには「訴訟能力」というものが必要です。まだ判断能力が十分ではない未成年者が訴訟なんてしてしまうと、その子自身の不利益になりかねませんから、そういう場合は親権者などの法定代理人が代わりに行わなければなりません。

 

今回の場合、裁判の相手はお母さん。そして、貴方の代理人も、貴方の親権者であるお母さん(話がややこしくなるので今回は父親の存在を考えません)。つまり、貴方の代わりに訴訟をする人と、訴訟の相手とが同じ人物になってしまうわけです。そうすると、貴方とお母さんとがそのままの関係で裁判をするのは極めて難しくなります。

 

ではどうするか。主に2つの方法が考えられます。

 

1つ目は、親の財産管理方法が非常に悪質の場合、家庭裁判所に申し立て、親権や財産管理権を喪失させてもらうこと。もっとも、20万円程度の使い込みでそこまでするのは難しいでしょうし、また、貴方とお母さんとの関係も大きく変わってしまいます。よっぽど悪質な場合でないかぎり避けた方がよいでしょう。

 

もう1つは、貴方が成人後に、お母さんを訴えるという方法です。と言うと、成人するまでに時効にかかると思われがちですが、貴方が未成年のうちは、親との間に時効は完成しません(民法158条2項)。ただし、その場合でも、お年玉の横領は財産管理に関するものといえるでしょうから、成人後5年の時効にはかかります(民法832条)。ですから、貴方は成人後、すみやかにことを起こさねばなりません。エエ年こいてからでは、手遅れになりますよ。

 

そんな法律論はともかく、本誌をお読みになっている親御さん方。子どものお年玉を勝手に使い込むと、後々ずっと恨まれることになるので、この正月はお気をつけなさいませよ。子どものものは、子どものもの、なんですから。