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男性として生まれ、数年前に女性に「トランス」した男と女のハイブリッド弁護士・仲岡しゅん氏。大阪生まれ、大阪育ちの若き闘士が、みなさまのトラブルをシュッと解決!

 

【今回の相談】「毎週、介護施設に入っている認知症の母(80)の見舞いに行っています。徘徊するようになったため、面会に行くとベッドに拘束されていることがあります。施設には、『ほかの利用者の迷惑になるため』と説明されましたが、ベッドに拘束されて泣く母を見るのがつらく、法律でやめさせることはできますか?」(50代女性・専業主婦)

 

【回答】「認知症だからといって、お年寄りを拘束するのは違法です」(仲岡しゅん)

 

結論から言いましょう。認知症だからといって、お年寄りを拘束するのは違法です。身体拘束は、本人にとっても不自由なのはもちろんのこと、ますます体が弱ることにつながりますし、何より人としての尊厳を害する行為です。

 

そして、今回問題になっているのは、介護施設での出来事。介護施設は、介護保険法に基づいて介護サービス提供者として指定を受けなければなりませんが、その指定基準である「介護老人保健施設の人員、施設及び施設並びに運営に関する基準」の第13条4項には、次のような規定がされています。

 

介護老人保健施設は、「当該入所者又は他の入所者等の生命又は身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き、身体的拘束その他入所者の行動を制限する行為(以下「身体的拘束等」という)を行ってはならない」と。

 

これはつまり「介護施設は原則として入所者の身体拘束をしたらアカン」ということです。ただ、どうしようもない緊急事態にかぎってのみ、例外的に身体拘束が許容される場合もあるのです。

 

許容されることがあると言っても、安易な拘束は人権侵害につながります。ですから、身体拘束ができる場合というのはかなり限定的で、次の要件をクリアしている必要があります。

 

まず、拘束しないことで危険が差し迫っており、拘束以外の手段を講じられない状態であること。そしてその場合でも、拘束はあくまで一時的措置であらねばならず、日常的な拘束は許されません。

 

つまり、身体拘束が例外的に許容されるのは、入所者がパニックを起こすなどして暴れ回り、身に危険が生じているようなケースと想定されます。またその場合でも、一職員の判断ではなく施設全体の判断である必要があり、さらに家族に対する説明と状況の詳細な記録が課せられます。

 

以上のことを踏まえてみると、今回のケースは身体拘束が例外的に許容される場合に当たるとは思えません。

 

法的手続きとしては、お母さまを拘束しないよう求める「仮処分」などが考えられますが、身体拘束は今すぐやめさせるべき行為です。貴女のほうから、施設にきちんと抗議いたしましょう。1人では不安であれば、弁護士に立ち会ってもらうのも1つの方法です。

 

または、介護施設を監督している自治体への相談・告発や、自治体に設けられている高齢者虐待の通報・相談窓口に話してみるのも手です。人の尊厳を冒す行為は何であれ、一刻も早くやめさせるべきです。