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男性として生まれ、数年前に女性に「トランス」した男と女のハイブリッド弁護士・仲岡しゅん氏。大阪生まれ、大阪育ちの若き闘士が、みなさまのトラブルをシュッと解決!

 

【今回の相談】「パート社員として働いていて、電車通勤の定期代、半年分で約10万円が自腹です。上司に交通費の支給をかけあっても『パートに通勤手当はない』と取り合ってくれません。でも、私と同じ駅を利用している正社員の人は満額支給されているんです。パートが交通費をもらえないのは仕方ないのでしょうか?」(40代女性・パート)

 

【回答】「パートに交通費を払うかどうかは、原則としては労働契約の内容次第です」(仲岡しゅん)

 

今回は、交通費を払ってくれない勤務先のご相談。わざわざ交通費を払って職場に行っているというのに、なんともヤル気のそがれるお話です。

 

ところで、正社員とパートとの違い、貴女は正確に知っていますか?「そんなもん、正社員が月給制で、パートは時給制の違いに決まってるやろ?」と考えておられる方。不正解です。

 

パートというのは正式には「パートタイマー」のこと。通常の労働者よりも所定の労働時間が短い「短時間労働者」のことを指します。それ以外の点において、たとえば時給制かどうか、社会保障制度があるかどうか、退職金があるかどうか、などの条件面は関係ないのです。

 

そのうえで、パートに交通費を払うかどうかは、原則としては労働契約の内容次第です。

 

わたくしたちの社会には「法律に違反しない限りどんな契約でも結んでよい」という契約自由の原則があります。そして、労働基準法に「交通費は必ず支払う義務がある」なんて条文はないのです。ですから、雇用契約書に「交通費が全額支給」と書いてあれば、全額支給してもらえますし、「支給なし」と書いてあれば支給してもらえない。これが原則です。

 

なんとも理不尽な話に思えますが、その条件で契約した以上は仕方ないのです。

 

もっとも「パートタイム労働法8条」には、パートと通常の労働者とで待遇に差異を設ける場合には、それが不合理であってはならないという規定があります。また近年、正社員には支払っている通勤手当を、いわゆる契約社員に支給しないのは不合理であり、違法であるという高裁判決も出ています。

 

そんな話を聞くと、「やっぱり、うちも交通費、払ってもらわなおかしいで!」と、思うのが人情というものですわね。

 

しかし、問題はそんなに単純ではありません。パートタイム労働法8条にしろ、先ほどの高裁判決にしろ、その会社で労働者が行っている具体的な業務内容や責任の程度など、多種多様な事情を考慮したうえで「不合理」といえる場合のみ、交通費を支払わないことが違法と判断されるのです。

 

「パート」とひと口に言っても、実際の働き方はさまざまであり、業務の具体的内容をよく考える必要があるということです。

 

たとえば、1日数時間程度、お小遣い稼ぎで働いているパートを、毎日フルタイムで働き、職責も重い正社員と、待遇面で全く同じように扱えというのは無理があります。貴女がそのような働き方をしているなら、通勤手当の支払いは認められない可能性が高いです。

 

逆に、パートとは名ばかりで、実際には業務内容も就労時間も正社員とほとんど変わらないというのであれば、通勤手当が認められる可能性はあります。形式的な雇用形態の違いだけで差別するのは「不合理」だからです。

 

もっとも、その場合でも、すんなり支払ってくれるとは思えません。雇用者とはとことん闘う必要があります。貴女に覚悟がおありなら、わたくしがひと肌脱ぎましょう。