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男性として生まれ、数年前に女性に「トランス」した男と女のハイブリッド弁護士・仲岡しゅん氏。大阪生まれ、大阪育ちの若き闘士が、みなさまのトラブルをシュッと解決!

 

【今回の相談】「上司との不倫関係が上司の奥さんにバレてしまい、慰謝料200万円を請求されました。でも、『妻とは離婚するから』と言って、執拗に迫ってきたのは上司の方。それを信じて付き合ってきたのにいまだに離婚の気配はありません。だまされた慰謝料として私からも上司に同額を請求し、相殺できないでしょうか?」(30代女性・会社員)

 

【回答】「『離婚するから』と交際を迫る妻帯者は、全員地雷。決して踏むべからず」(仲岡しゅん)

 

法的にみてまいりましょう。妻を裏切っていた張本人だけでなく、いわゆる「浮気相手」の側にも、慰謝料の支払い義務が生じるのは、上司と貴女の不倫が、法的には2人の「共同不法行為」となるからです。きわめて大ざっぱに言えば、「アンタら2人、協力して悪いことしたやんけ」ということ。

 

とはいえ、一口に不倫といっても、その責任の程度はケースによって変わります。

 

「求償権」(民法第442条1項)という制度があります。また、先ほどの「共同不法行為」の場合、妻への慰謝料支払い義務は「連帯債務」となり、それぞれの責任の程度に応じて「負担部分」が割り当てられます。そして、自分の責任の範囲、つまり「負担部分」を超えた慰謝料を支払った場合には、もう一方の連帯債務者に対して、その分を請求することができるのです。

 

たとえば、浮気相手の女性の側から積極的に妻帯者を誘い、家庭を崩壊させた場合は、女性側の「負担部分」が大きくなり、求償できる金額は少なくなります。

 

一方、貴女の場合は上司に執拗に言い寄られ、やむなく応じたとのこと。つまり、貴女の責任より、上司の責任のほうが重いわけです。仮に貴女が200万円の慰謝料を支払ったとしても、この「求償権」を行使すれば、連帯債務者である上司の「負担部分」を、上司に対して請求することができます。

 

もっとも、「求償権」を行使できるのは、あくまで不貞行為に関する貴女の責任を超える部分。貴女が支払った慰謝料金額を相殺することはできないでしょう。

 

そこで、別の手段も考えたいのですが、今回のご相談には気になる点が2つあります。

 

まず、慰謝料の額。実質的に婚姻関係を破綻させた場合は慰謝料が数百万円となることは珍しくありません。しかし、今回の上司は「離婚の気配もない」のですから、200万円は少々高すぎるでしょう。まだ支払っていないのなら、交渉の余地がありそうです。

 

次に、相手が会社の上司で、「執拗に迫ってきた」という点。納得のうえで始めた交際なら貴女にも責任がありましょうが、執拗さの程度によってはセクハラと認められる可能性があります。

 

上司との関係では、貴女もいわば「被害者」。もっとも責任が重いのは離婚すると偽って浮気をした上司です。

 

支払いがこれからなら、慰謝料の額について奥様側と交渉を。既に支払ってしまったなら、上司に対する「求償」を検討。さらにセクハラに当たりそうなら、弁護士に相談しましょう。

 

とはいえ、3つともストレスフルな作業です。わたくしから助言をするならば……。「離婚するから」と交際を迫る妻帯者は、全員地雷。決して踏むべからず。