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「今年5月の天皇皇后両陛下の即位の儀式が終わると、壇上の両陛下はたくさんの出席者に囲まれておられました。雅子さまは明るい笑顔でご対応されていましたが、最年長の私などはご遠慮申し上げてと思って、何も申し上げずにその場を辞しました。すると翌日、雅子さまは女官長を通して『お元気そうで安心しました』と労いのお言葉をくださったのです」

 

こう語るのは、國學院大學名誉教授の岡野弘彦さん(95)だ。昭和天皇との交流もあり、歌会始など重要な儀式で披露する、和歌のご進講を長年務めている。

 

「雅子さまに初めてお会いしたのは、お妃教育の一環ですので、結婚される少し前からでした。将来、皇后になられるというご覚悟は、当然おありでいらっしゃったのでしょうから、私も、そういうお気持ちを察しながら、お教えしました」

 

週に1度、1時間から1時間半ほど通い、雅子さまに和歌の手ほどきをしたという。

 

「『万葉集』から入り、格調高い『玉葉集』『風雅集』を教材といたしました。歌というのは古典の中に流れる、伝統的で、繊細で美しい日本語の表現を必要とします。雅子さまはこまやかな感覚をお持ちなので、あまり初歩からじっくりお教えする必要はないほど、上達がお早かったのです」

 

岡野さんは、雅子さまから初めてご出席の歌会始(1994年1月)で披露される歌の相談も受けたという。

 

「『おし照るや』という古い表現を、現在も使ってもよろしいのかというものでした。仁徳天皇が詠まれた歌にも使用されている言葉で、湖の上に、日の光や月の光が煌々と照りわたる表現なのですが、たいそう古典的な言葉が出てきたので、驚きました」

 

こうして詠まれたのが《君と見る波しづかなる琵琶の湖さやけき月は水面おし照る》という歌である。

 

「ご成婚後間もなく、両陛下で訪れ、宿泊された琵琶湖畔のホテルでご覧になった夜の情景が、見事に表現されています。あまりに立派にできていたので、思わず私は『どなたかにご相談になりましたか?』と伺いましたが、雅子さまは『いえいえ、何も』と答えていらっしゃいました」

 

岡野さんは、美智子さまの《かの時に我がとらざりし分去れの片への道はいづこ行きけむ》という歌を振り返る。

 

「《分去れの》という言葉からは、あのとき自分が選ばなかった分かれ道のもう一方の道をたどっていたら、今ごろはどうなっていたのだろうかと詠まれた深いお心が感じられます」

 

和歌を詠むというのは、そうした言葉の感覚を研ぎ澄ますことにもつながるという。

 

「令和の時代、両陛下には新たな皇室像をつくるとともに、日本の伝統も後世にお伝えしながら、時には共に喜び、苦しいときには勇気付ける“心の言葉”を紡いでいただきたいと思います」

 

『女性自身』皇室SPECIAL即位記念号「雅子さま 輝く笑顔が時代をひらく!」より

 

 

『女性自身』皇室SPECIAL即位記念号「雅子さま 輝く笑顔が時代をひらく!」

発売日:10月15日(火)
発行:光文社
価格:500円(税抜き)
https://www.amazon.co.jp/dp/4334843417/

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