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「亡くなられた方々を心から哀悼されるとともに、ご遺族と被災された方々にお見舞いのお気持ちをお持ちでいらっしゃいます」

 

7月最初の週末に熊本、鹿児島を襲った豪雨被害について、週明けの6日、宮内庁はいち早く天皇皇后両陛下のお気持ちを発表した。

 

その後も記録的な大雨は続き、豪雨被害は九州全域から西日本、岐阜、長野にまで及んでいる。宮内庁関係者が明かす。

 

「陛下と雅子さまは日増しに拡大する被害に、深く心を痛めていらっしゃるそうです。できるだけ早く被災地に駆けつけ、地元の人々に心をお寄せになりたいと思われているでしょう。しかし宮内庁としては、両陛下が新型コロナに感染される可能性をゼロにできない限り、被災地ご訪問をお止めせざるをえません。苦しむ人々に寄り添うことこそが皇室の務め――。そうお考えになっている陛下と雅子さまは、強いジレンマをお感じでしょう」

 

これまで両陛下は、心を込めて被災地へのお見舞いをされてきた。昨年10月12日から13日にかけて日本列島に甚大な被害を与えた台風19号に際しては、15日にお見舞いの気持ちを表明。22日に予定されていた即位のパレード「祝賀御列の儀」は延期となった。

 

「お忙しいなか、年末も押し迫った12月26日に被害の大きかった宮城、福島を見舞われたのは、その年のうちに訪問されたいという陛下と雅子さまの強いご希望があったからなのです」(前出・宮内庁関係者)

 

国民の前にお出ましになれない日々が続くなか、7月10日、雅子さまは「御養蚕納の儀」に臨まれ、今年の養蚕作業を終えられた。皇室担当記者が言う。

 

「皇后のお務めとして受け継がれてきたご養蚕ですが、今年、雅子さまは宮内庁を通して“前例のない情報発信”をされました。まず収穫された生糸の写真を報道機関に提供されました。さらに侍従を通じて、初めての養蚕を無事に終えたご感想を公表されたのです」

 

御養蚕納の儀の直後、侍従は次のように、雅子さまのご感想を伝えた。

 

「お導きをいただかれた上皇、上皇后両陛下、そして、おそばで見守られた天皇陛下をはじめ、作業に携わっていただいたご養蚕所主任や関係者に、深い感謝のお気持ちをお持ちです」

 

しかし、雅子さまのご決断に驚く宮内庁職員や記者もいたという。平成以前のご養蚕では、神事である御養蚕納の儀の取材自体がなかった。そのため、写真提供もご感想の公表も“タブー”だと考えるむきがあったというのだ。

 

だが雅子さまは、ご自身のお務めを国民に伝えるために“前例なき試み”に踏み出された。公務などのお出ましもなく、この災厄にも国民に寄り添い対話することのできないジレンマが、雅子さまのお気持ちを後押ししているのだろうか――。

 

皇室ジャーナリストの渡邉みどりさんもこう話す。

 

「上皇ご夫妻が実践されてきたように、祈るだけではなく行動することによって、国民との距離は縮まり、被災者に寄り添う心も伝わります。両陛下は医療や介護などさまざまな分野の専門家から、コロナ禍における現場の状況をお聞きになっています。ただ、両陛下はそれだけでは足りないとお考えのはずです。コロナ禍の今だからこそ国民を思う気持ちを具体的な形で示したいとお考えになっていることでしょう」

 

すでに皇室内では、さまざまな前例なき試みに向かって、皇族方が動きだしている。秋篠宮ご一家は、新型コロナに関して何度も専門家とオンライン会談を重ねている。また、三笠宮家の彬子さまは7日、オンラインセミナーに参加され、九州の豪雨で被災した人たちに向けて、お見舞いの言葉を述べられた。

 

「すでに皇室の中でもオンライン交流は取り入れられているのです。今後はさらに“皇室の新様式”が進むことになると思います。陛下と雅子さまも、オンラインによる被災地へのお見舞い、国民にメッセージを送ることなどをお考えでしょう。直接会えない中でも、お気持ちでは『国民とふれあう』ことができるはずです。それが実現すれば、まさに時代を変える“宮中改革”になるのではないでしょうか」(前出・宮内庁関係者)

 

そして天皇陛下は「水問題」を専門とする研究者でもある。その研究活動をサポートしている尾田栄章さんはこう話す。

 

「陛下は水問題のエキスパートとして、利水や治水に関する高い知識と洞察力をお持ちです。それだけに、今回のように水害で苦しむ人々に寄り添われる気持ちは強いのだと思います」

 

日本が毎年のように記録的な豪雨に見舞われている今こそ、天皇陛下の「水」についての知見が生かされるとき。これまでにない情報発信が求められている。雅子さまは陛下とともに前例を打破し、国民と心を通わせる――。

 

「女性自身」2020年7月28日・8月4日合併号 掲載

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