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今秋のナンバーワンドラマ『下町ロケット』が早くも社会現象になりつつある。阿部寛(51)演じる町工場の社長・佃航平が「ロケットを飛ばす」という長年の夢を追い続ける物語だ。

 

「長年、企業の知的財産への意識の低さを訴えてきましたが、ここまで正確に、かつ、わかりやすくそのことについて取り上げているドラマはありません。原作が直木賞を獲った翌年から、大学院の授業や社会人の研修に課題図書として使っています」

 

こう語るのは、特許をはじめとする知的財産の専門家で、NPO法人産学連携推進機構・妹尾堅一郎理事長。内閣知的財産戦略本部の専門調査会長を務め、東大大学院で教鞭をとるエキスパートが唸るほどの描写がそこにはある。

 

佃が経営する精密機械メーカー「佃製作所」はいい製品を作っていながら知的財産への意識が甘かったため、ナカシマ工業に特許侵害で訴えられる。

 

「正直な佃と、あくどいナカシマとの対比がうまく描がかれていて非常にいい教材です。両者のビジネスモデルと知財マネジメントをグループで考えさせ、議論させると盛り上がります」(妹尾理事長)

 

出演者のキャスティングにも制作陣の強い思いが見える。ヒロインで佃の娘・利菜役にNHK朝ドラ『まれ』の主演でブレイクした土屋太鳳(20)。帝国重工宇宙航空部の開発担当部長・財前道生役には、エリート役は珍しい吉川晃司(50)を起用した。

 

「プロデューサーの伊與田英徳は、’10年の高視聴率ドラマ『新参者』で阿部を起用した人物。阿部にとってはこれが代表作のひとつになった。伊與田Pが熱い思いを持つ佃役にぴったりだと、満を持して声をかけた。父と兄が技術者で、自身も中央大理工学部出身の阿部であれば、技術者のイメージにも合う。伊與田Pは’12年に土屋が出演した『黒の女教師』の担当でもある」(TBS関係者)

 

そして、もちろん、ストーリーこそが肝であることは言うまでもない。「正義は我にありだ!」と、ナカシマとの特許侵害裁判の証言台で力強く言い切ったこの言葉が、佃の経営者、技術者としてのすべて、そしてこのドラマのあり方を表している。

 

「『正直者が馬鹿を見る』ような風潮のなかで、『下町ロケット』は『正直者が救われ、観ていてホッとする』ドラマです」

 

そう話すのは、映像メディアに詳しい立教大社会学部メディア社会学科の砂川浩慶准教授だ。

 

「第3話で若手社員たちがヘッドハンティングにあい、待遇面の問題を指摘されるシーンは、特に大企業に勤める中間管理職の40代、50代は身につまされたと思います」(砂川准教授)

 

ドラマ評論家の木俣冬氏は高視聴率の理由を次のように分析する。

 

「同じ制作チームが手がけた『半沢直樹』と同様、勧善懲悪で弱者が勝つというわかりやすさが勝因です。主演の阿部さんの濃密な演技からは苦悩、悲しみ、悔しさなどが的確に伝わってくる。時代劇的な原点回帰の作風が、幅広い世代に支持されています」

 

(週刊FLASH11月24日号)