男子サッカー日本代表をひとつにした「落選メンバーからのDVD」

男女の代表がそろって決勝トーナメントに進出した。これは日本サッカー史上初の快挙である。しかし、そこに至るまでの道程には大きな違いがあった。金メダルを期待され、激励の拍手で送り出されたなでしこジャパン。かたや何の期待もされず、壮行試合ではブーイングとともに放り出されたのが”ヤング”サムライブルーだった。

「関塚ジャパンが、ここまで監督やコーチを含め、チームがひとつにまとまることができたのは、1枚のDVDのおかげなんです」(現地取材記者)

英国中部での合宿中の7月20日夜。この日は本番に向けた調整試合のメキシコ戦前夜であり、東慶悟の22回目の誕生日だった。その祝いのあと、ミーティングルームに集まった面々を前にして齋藤学(22)は、1枚のDVDをセットした。バックアップメンバーを含めた22人の名前、背番号、写真が一人ずつ映し出されていく。さらに口癖など、お笑いの部分も加えられていた。関塚隆監督(51)らコーチのものまであり、上映された約8分間は笑いの渦に包まれた。

制作者は比嘉祐介(23)。サッカーファンならご存知だと思うが、関塚ジャパンが結成された’10年アジア大会からの主力メンバー。ロンドン五輪予選でも8試合中7試合に先発した左のサイドバックだ。ところが、最後の最後に涙をのみ、ロンドン行きのメンバーから外されてしまった。

彼のように予選ではレギュラーでも、本大会で外された選手はほかにもいた。そのうちの一人は落選を聞くと、「話す気分になれない。五輪のことはもう忘れた」と、不満の表情を見せた。しかし、比嘉は違った。おそらく泣き叫びたい衝動に駆られたであろう落選の7月2日から、「みんなに楽しんでもらいたかった」とDVD制作に着手した。そして、英国出発前日の7月14日に、同じ横浜FMの齋藤にその思いを託したのだった。

このDVDを観たとき、笑いが絶えなかったと同時に、チームのみんなが感謝の気持ちを抱いた。とくに比嘉を外した関塚監督はいたく感激したという。そして、DF徳永悠平(28)も「代表から落ちた選手がここまでやってくれるとは。チームへの気持ちを感じました」と語っている。”ヤング”サムライブルーは歴史に名を残すほど、『絆』を感じさせるチームなのは間違いない。