「水害とか食料不足とかいろいろ報道されているけど、金正恩体制になってから、北朝鮮の生活はどう変わったのかな。そうだ、北朝鮮に国際電話をかけてみましょう」

突如、編集部より記者に振られた無理難題。北朝鮮に電話って、いったいどうすればいいのか。とりあえずKDDIに聞いたところ、「朝鮮民主主義人民共和国の国番号850、平壌なら平壌の市外局番2、市内局番381、その後に相手の4ケタの番号の順にプッシュしてください。でも、時期によっては平壌の一部以外は通じないこともあります」とのことだ。

さっそく最後の4ケタを適当な数字にしてかけてみたが、通じない。では、固定電話ではなく携帯電話ならどうか。携帯は金日成の誕生年である1912をつければかかるらしい。最近では北朝鮮でも携帯が一気に普及している。契約数は人口の5%。100万台を超えているというから、数撃ちゃ当たるかもしれない……と思いきや、全滅!

それならと、道行く人に聞いてみた。実は記者が今いる場所は、大阪の鶴橋。たくさんの在日コリアンが暮らし、金正恩の母親・高英姫の生家跡もある。ここなら北朝鮮の親戚に電話している人も多いはずだ。「北朝鮮に電話をかけたいんですが」と尋ねると、1人のオモニ(おばちゃん)が憐れむような顔で「こっちから向こうへは電話はかけられへんの。向こうからかかってくるのを待つしかないんや」と教えてくれた。

「北朝鮮は国際電話ネットワークに入っていないので、携帯への電話は無理ですよ。固定電話なら、10年くらい前に出回った北朝鮮の電話帳があるんで、掲載された番号に片っ端から電話するのも一つの手ですね。もっとも、4年くらい前に電話番号が大幅に変えられたので、つながらないかもしれませんが」

そう語るのは、北朝鮮の内部事情に詳しいアジアプレス・インターナショナル大阪代表の石丸次郎氏。電話帳に掲載されている番号は全部で4万件。そこで、元朝鮮総連のA氏に電話してもらうことに。しかし、やはりつながらない。13本目にようやくつながった電話は中国の貿易会社。その後もつながらず「呼び出し音が途切れるんですよ。これは盗聴されている可能性が高いですね」とA氏。このあたりから妙な雑音が増え、どうやら完全に盗聴が始まった感じだ。

そこで戦略を変え、ネット上で公開されている電話番号へかけることに。まずは高麗ホテル。北朝鮮で最も高級な「特級」ホテルだけあって、案の定つながった。だが、当たり前だが事務的な対応で会話が弾まない。なんとか一般庶民につながらないものか。

さらに検索で見つけたのは、北朝鮮では珍しい高級そうな靴のブランド店。電話してみたが、つながらない。そこで試しに、平壌市外局番の2と市内局番の381の間に18111をつけて交換台を通したら、見事、つながった。電話に出たのは、アイドルのように可愛い若い女性の声だった。

A氏「あなた、若いのに会社の業務に詳しいね、いくつ?」

彼女「23歳です」

A氏「自分のところの靴は履いてみたかな?
友達と出かけたりした?」

彼女「いえ、履いたことないんです」

A氏「休みの日は何してんの?
友達と公園とか?」

彼女「公園はよく行きますよ」

A氏「この週末も行くの?」

彼女「寒くなったら、わからないですけど……」

ここで不審に思ったのか、我に返った彼女は「担当者がいないので、5時以降にもう一度お電話ください」と言ってガチャン。その後、この番号は2度とつながることはなかった。結局、100本以上かけてつながったのはたった3本。北朝鮮って、やっぱり近くて遠い国なんだなぁ……。

 

(週刊FLASH 116日・13日号)