「母になって女性の孤独噛みしめた」2児ママ板谷由夏明かす産後の苦悩

投稿日:2022/09/17 06:00 更新日:2022/09/17 06:00
「母になって女性の孤独噛みしめた」2児ママ板谷由夏明かす産後の苦悩
「現場に搾乳機を持って行ったことも…」

「クランクインの日の直前が、事件で亡くなったホームレス女性のご命日で、幡ヶ谷のバス停に、花を供えて手を合わせました」

 

そう語るのは、女優の板谷由夏さん(47)。コロナ禍の’20年11月、東京都渋谷区幡ヶ谷のバス停で寝泊まりするホームレスの女性が襲われて命を落とした事件を元にした、オリジナルストーリーの映画『夜明けまでバス停で』(10月8日公開)で、主演を務めている。

 

「幡ヶ谷という場所は私にとって遠いところではなかったし、事件を知ったときは衝撃でした」

 

非正規雇用、女性の貧困、コロナ禍など、今の時代の生きづらさが浮き彫りとなるテーマを突き詰めて、社会派の高橋伴明監督が映画化した作品だ。

 

板谷さんが演じる三知子は、真面目で責任感の強いしっかり者だ。焼き鳥屋の住み込みアルバイトだった彼女は、コロナ禍で仕事と住まいを失い、バス停で寝泊まりせざるをえなくなる。

 

板谷さんは役の理解を深めるため、事件の資料を読み、居酒屋でのバイトも経験し撮影に臨んだ。

 

「映画は10日間で撮ったのですが、その間の記憶がほとんどない(苦笑)。ただ撮影中、ずっと孤独感が身にまとわりついているかのようでした。三知子は田舎の母とうまくいっておらず、頼れる人がいなかった。さらに、しっかり者だからこそ、バイト仲間や友人に『助けて』と言えないんです。春にホームレスになって以降、大きなキャリーケースを引いて街をさまよう生活が続きます。コインランドリーで夏服を着て洗濯する場面を撮ったのに、ラストシーンではコートを着たので、ホームレスになり春から冬にうつったと実感してゾッとしました。三知子が孤立してから長い時間がたってしまったことを体感したんです」

 

人が孤立するきっかけは、いつ誰に起こるかもわからない。犠牲になったホームレス女性も、決して違う世界の話ではないのだ。

 

■人に頼ることを“恥ずかしい”と思い込んでいる女性は多い

 

「私たち昭和世代は、『弱音を吐くな』『人に迷惑をかけちゃいけない』と教育を受けてきたし、世の中にもそういった風潮がありましたよね。コロナ禍で人のつながりも希薄になり、『助けて』と、言うタイミングもわからないのではないかと思うんです」

 

だからこそ板谷さんは「私は、自分の身近な人には手を伸ばし続けたい」という。そこには『NEWS ZERO』(日本テレビ系)で11年間キャスターを務め、貧困、虐待、子育てなどをレポートした経験も大きい。

 

「キャスターとしてシングルマザーやネグレクト(育児放棄)、虐待など、さまざまな女性の問題を取材したんですが、人に頼ることを“恥ずかしい”と思い込んでいる人が多いと感じました。しかしその結果、乳飲み子を抱えてたった一人で子育てに悩み、心が追い詰められて、虐待してしまった人もいる。『助けて』と言えないことに全部つながっている気がします」

 

板谷さんも、かつては「自分のことは自分で解決しなきゃいけない」と思っていたが、母になったときに友人から手を差し伸べられて、考えが変化した。

 

結婚したのは31歳のとき。現在、14歳の長男と10歳の次男の母だ。

 

「1人目の子どもを産んですぐのことです。授乳中で、なかなか外に出られない時期に、私は独りぼっちだと感じました。こんなかわいい子がいるのにもかかわらず、社会とつながってないという孤立感を覚えていました。そのとき、育児経験のある友人が気にかけてくれたんですよね。差し入れを持ってきてくれたり電話をくれたりして、『まいってない?』とか『ちゃんとご飯食べないとだめよ』と声をかけてくれて、すごく救われたんです。初めての子育てで、心が沈んでしまいやすいといったことなども、もっと産婦人科で教えればいいのにとも思いました」

 

 


「周囲のSOSを見逃さないようにしたい」と板谷さん

 

■子どもの教育だけでも格差がない社会を

 

仕事に復帰してからも、家庭との両立は《思っていた以上に大変》だったと語っている。

 

《特に下の子が生まれた後の数年間はどうやって育てていたか記憶もないくらい無我夢中でした》(『週刊現代』’18年9月1日号より)

 

《子供が赤ん坊の頃は、現場に搾乳機を持っていっていました。ワンシーン撮り終えると、胸がパーンと張るので、搾乳して冷凍庫に入れて》(『婦人公論』’16年10月号より)

 

多忙を極める母親生活が始まって以降、板谷さんも出産した友達には連絡をするようになった。

 

「時々LINEしたり、おいしい食べ物を送ったり……。ママ友に本当に助けてもらったので、私も、身近な人には踏み込んでいきたいです。また、自分ができる範囲で、身近な人のことを、優しい気持ちで見ていたいと思うんです。『助けて』と言われなくても、何かSOSの信号が出ていないかとか。うるさいと言われても、人様のことにも少しは首をつっこんでもいいかなって思ってます」

 

そうした少しの関わりが、板谷さんのときのように、孤独を感じている誰かを救うかもしれない。

 

映画は、現実の事件とは、違うラストを迎えることになるが……。

 

「本当に苦しんでいる人は、映画館に来る余裕はないはずです。だから映画を見た人が、少しでも周りの人に気を配ってみてほしい。

 

私たちは、理不尽なことに怒っていいし、助けを求めていい。そして、つらいときは遠慮せずに、自分の思いを誰かに打ち明けていいと思うんです。また、映画でもあったように、非正規雇用をはじめとした格差は大きいと思いますが、一人の母としてはせめて子どもたちの教育の格差だけでもなくなってほしいと心から思います」

 

力のあるまなざしでそう語った。

 

【PROFILE】

板谷由夏

’75年生まれ。福岡県出身。女優やモデルとして活躍

 

(ヘアメイク:結城春香/スタイリスト:古田ひろひこ/衣装:SINME)

 

配給:渋谷プロダクション
制作会社:G・カンパニー
(C)2022「夜が明けるまでバス停で」製作委員会
10月8日(土)より新宿K’s Cinema、池袋シネマ・ロサ他全国順次公開

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