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「同期のお笑い芸人には、横澤夏子、おかずクラブがいます。東京のNSC(吉本興業の養成所)の授業が始まるその前日まで、僕は東京国税局に出勤していました」

 

こう語るのは、お笑い芸人のさんきゅう倉田さん(32)。税金にまつわる話をツイッターで発信し、フォロワーは1万人を突破。しかし、なぜ国税局の調査官から芸人に!?

 

「芸人になるのが夢でした。そのため、’09年に国税局を退職することにしたんです。年収は減りましたが……。でも、税についての知識の収集は今もおこたっていません。当時からの知識を生かして、芸人向けに確定申告の仕方も紹介しています」(倉田さん・以下同)

 

毎年恒例の「確定申告」。自営業などに携わる読者の中には、“税金なんてあまり払いたくないなぁ”と思いながら、あたふたと帳簿の整理などを始めている人も多いはず。さらに申告した後、すべての社長が恐れおののく“厄介”なイベントも--。

 

「明らかに売り上げが伸びている事業主は申告漏れがないか、また明らかに落ちている場合は売上金を隠していないかなどを調べるため、国税庁の職員がその職場に直接『税務調査』に入ることがあります。税務調査は最低3年分、多くて5~7年分まで遡って調査を行います」

 

また、申告書がいい加減で添付書類に漏れがある人も、職員の目にとまりやすいそう。

 

「法人設立や個人事業の開業から3年たっているところはすべて、税務調査の対象になりえるんです。そのターゲットになるかならないかは、ぶっちゃけ“運”ですね(笑)」

 

倉田さんが実際に調査に向かったある個人事業主は、自宅近くのファミレスや居酒屋の領収書が多かったという。

 

「家族との外食費を経費にしているだろう、と思いました。実際に『誰と食事しましたか』と問い詰めていくと、予想は的中。もちろん家族との食事は経費にはならず、所得税の対象として課税されます。その人は過少申告加算税、延滞税、利息、住民税の追加も合わせて40万円以上の追徴課税になりました」

 

キチンと申告しないと、イタ~いペナルティを受けることに。国税局時代、100社以上の税務調査をした倉田さん。感情に訴えて徴税を逃れようとした人も多いと振り返る。

 

「70歳過ぎの男性に追徴課税200万円と告げたときには、『無理です。70を過ぎて急にそんなに払えない。死ぬしかありません』と、泣きつかれたこともあるんです」

 

上司に相談すると、驚くべき言葉が返ってきた。

 

「『倉田、アイツら(脱税者)は平気で嘘をつく。お前は若いからわからないんだ』と言われて。それでも上司に課税を100万円に減らすのを認めてもらい、報告するためにすぐに家に行きました。すると僕の目の前を、泣きついたはずのおじいさんが黒いライダースーツ姿で、ハーレーダビッドソンにまたがり駆け抜けていったんです(苦笑)」

 

ときには、“タレコミ”があることも。

 

「その人に恨みを持つ人から『あいつは正しく経費を計上していない』と告げ口もあります。人から妬まれないことも大切です」

 

国税局の厳しいチェックを受ける確定申告。正しく切り抜けるにはどうすればよいのだろうか。倉田さんは、「当たり前だけどやってほしいことがある」と語る。

 

「まずは、税理士の先生をつけること。それだけで『キチンとしている』という印象をもたれます。事実、冒頭で話した40万円以上の追徴課税を受けた人は税理士をつけておらず、テキトーに管理してしまっていました。税理士がついていない人は、丁寧に申告書を書くこと。空欄の多い人はダメ。字もキレイに書くとなおよしです。また、税務署に行くときは、キチンとしたよそ行きの格好で行くのがよいでしょう。第一印象は大事です。そして、可能な限り特例や節税法を活用すると同時に、ズルすることなく申告すれば大丈夫ですよ」

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