いま世界でもっとも読まれている本が、トマ・ピケティの『21世紀の資本』だ。700ページ6千円の重厚、難解な書籍が16万3千部のベストセラーに。その気になる中身を、同書翻訳者の山形浩生氏に聞いた。

 

「主張しているのは、じつは簡単なこと。各国で貧富の差が拡大しており、大きく改善しそうにないということ。財産を持っている人が、経済成長によって所得が上がる以上のペースで、さらに金持ちになっていくからです。ピケティの功績は、このことをデータで裏付けたことにあります」

 

ピケティが200年、20カ国以上の税務統計を遡り、紀元0年までを推測して導き出したのが「r>g」の公式だ。資本収益率rが経済成長率gをつねに上回るという意味。rは平均すると4〜5%。一方、資本主義先進国におけるgは1〜2%。ざっくり言えば、働いて得られる収入は、年1〜2%しか上昇しないが、株やファンド、不動産があれば、年4%の利益をあげられる、ということだ。

 

「資産の規模が大きいほど、得られる収益率は上がる。ピケティは『フォーブス』誌が発表する世界の長者番付を調べ、世界上位1億分の1の富裕層の平均資金は、1980年代後半が30億ドル超だったのに対し、2010年代前半には350億ドルへと増えていることを明らかにしています」

 

たとえば、ビル・ゲイツは’90年からの20年間で財産を40億ドルから500億ドルに増やしている。

 

「『r>g』が続き格差が拡大すると、真面目に働くより世襲で財産を相続するほうがいいとなってしまいます。民主主義社会の価値観とは相容れず、ナショナリズムや保護貿易の勃興による緊張状態が生じる可能性をピケティは指摘しているのです」

 

ピケティは2100年までに中産階級は緩やかに消滅していくと結論づけているのだ。

 

「r>gを回避する方法は3つある。まず、gを上げる、つまり経済成長率の引き上げ。次にインフレ。そしてピケティがもっとも重視するのが世界的な規模での累進課税です」

 

累進課税とは、資産が多ければ多いほど高くなる課税の仕組みだ。ピケティは、富裕層が相続によってますます富んでいく傾向を「世襲資本主義」と称し、経営者と労働者の格差をより深刻なものと主張している。だからこそ、国際的な強調のもと、資産への課税と相続税を強化するべきという。

 

「ピケティは本気です。たんに1国が資本税を導入するだけでは、税率の低い国に逃げていくだけ。ピケティは経済成長と格差是正は両立できると考えています」

 

ポイントはわかっただろうか?実際に読むと1カ月はかかります……。

 

(週刊FLASH2月3日号)

関連タグ: