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(写真・神奈川新聞社)

 

横浜を代表する酒場街・野毛に、主に独身や単身赴任暮らしの男性向けに、栄養価の高い料理と酒を提供する小料理屋が開店した。切り盛りするのは、管理栄養士のおかみを中心にした主婦たち。「好きな酒を長く楽しむには、健康に配慮した食事が欠かせない」。そんな思いを胸に、暴飲暴食に陥りがちな飲んべえたちを栄養、もてなしの両面で支え、野毛の新たな顔を目指す。

 

小料理屋「月読(つきよみ)」(横浜市中区野毛町3丁目)は10月末に開店。昨年7月に69年の歴史に幕を下ろした老舗居酒屋「武蔵屋」の跡地に立つ。JR、市営地下鉄桜木町駅から動物園通りを進むこと数分、満月を模した看板が目印だ。昭和の和食をコンセプトに、煮物や焼き物を中心に、バラエティー豊かな献立をそろえる。

 

おかみは京都出身で、管理栄養士の成田安恵さん(52)=同市港南区。経営理念の根幹には健康第一を据える。自身も飲み仲間と盛り上がるのが大好きだが、「尿酸値が高くてビールが駄目とか、体調が優れず酒が飲めないという仲間が増えてきた。食生活への配慮が行き届かない1人暮らしの男性にその傾向が強い」と感じたという。

 

以前、保育園の給食調理に携わった成田さん。飲食業への熱意に加え、独身・単身の男性が健康を損ない、好きな酒を控えざるを得ない実情に思いを寄せたのが、体にやさしい小料理屋を目指すきっかけになった。「きっとうまくいく。頑張れ」。夫や自立した3人の娘たちの後押しも受け、同年代の主婦仲間と協力。約1年かけて開店資金や食材調達先の確保などに奔走し、店を構えた。場所の選定は「飲んべえが集う野毛しかない」との仲間のアドバイスで決めた。

 

生命線の料理へのこだわりは人一倍。味を決定づける「だし」にはうま味調味料を一切使わず、国産昆布やかつお節に加え、ゴボウやフキといった山の幸をふんだんに取り入れる。定番の「肉じゃが」は、素材の水分だけで調理する手法を駆使し、栄養価の高いジャガイモの皮までおいしく摂取できるよう工夫。県内食材を豊富にそろえ、乳酸発酵させた自家製シロップを使ったオリジナルカクテルも好評という。

 

「やさしい味付けでおいしい」「飲んだ翌日も、体に負担を感じなくなった」。まだ開店1カ月ほどだが、足しげく通う客のこうした声に励まされているという成田さん。昭和のヒットナンバーが流れる店内で「家庭の味が恋しい独身・単身男性の聖地になれるよう精進したい」と意気込んでいる。ランチ営業もしており、火曜定休。問い合わせは電話050(5783)7254。

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