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(写真・神奈川新聞社)

 

東京電力福島第1原発事故で横浜市に自主避難した男子生徒(13)がいじめを受けた問題は、学校だけでなく、市教育委員会が設置した学校教育事務所のずさんな対応が明らかになった。いじめや学級崩壊を訴える別の保護者にも「学校に指導はするが介入できない」などとする及び腰の姿勢が目立つ。こうした対応に文部科学省も苦言を呈する。

 

方面別学校教育事務所の導入はいわば“鳴り物入り”だった。若手職員の大量採用や教員の多忙化で、市教委事務局だけでは500を超える学校の対応は難しい。そこで2010年度、政令指定都市で初めて市内4カ所に教育事務所を設置。人材育成などのほか、学校が抱えるさまざまな課題への対応支援が大きな柱だ。1事務所当たり約120校を担当する。

 

今回のいじめ問題では、14年6月ごろ、子ども間の金銭授受を知った保護者が学校に相談したが「警察に相談してください」などと言われ、連絡した教育事務所にも「介入できない」と対応されなかった。

 

こうした一連の対応がいじめ防止対策推進法で定める「重大事態」の認定遅れを招いた。市教委の第三者委員会は調査報告書で、教育事務所は保護者と学校のコミュニケーションが円滑でなくなれば積極的に介入すべきだったとし、「猛省を願いたい」と指摘した。

 

こうしたケースは他にもある。小学生の子どもを持つ30代の母親は、1年ほど前、学校にいじめ被害を相談したが改善せず、教育事務所にも「再度学校に連絡してください」「開設時から直接保護者とは会わない原則になっている」と告げられた。事務所前まで足を運んでも会えなかった。学校と保護者それぞれから面会への同席を求めても「上司の決裁が下りない」と拒否された。

 

だがその後弁護士を立てたところ、「今後は事務所で対応します」と連絡があった。保護者と子どもは転居を余儀なくされ、「学校が機能せず、頼みの綱の教育事務所にこんな対応をされたら、保護者はどうしようもない」と憤る。

 

この他にも、複数の保護者が「事務所に相談しても『規則で会えない』と言われた」などと証言している。

 

東部学校教育事務所の上條慶昭所長は「学校と保護者の関係がこじれると事務所が介入するケースは多くあるが、その実績数は分からない」と説明。教育事務所に勤務する職員は各校校長らより年次などが低い場合が多く、学校に問題を指摘しにくいとする関係者もいる。

 

文科省児童生徒課は「教育委員会は学校の設置者であり、全ての権限がある。事務所が仲介して保護者の訴えを聞くことも大事で、今回発覚したいじめ問題のように果たされていないなら、すぐ見直すべきだ」と批判する。

 

岡田優子教育長は12日の市会常任委員会で、4カ所の教育事務所長に現状や実態について確認すると明言。15日から始める市教委の内部検証で徹底した原因究明と再発防止策を講じるとした。

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