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(写真・神奈川新聞社)

 

野球の国・地域別対抗戦、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の準決勝で21日(日本時間22日)に米国と戦う日本代表に、横浜から熱いエールを送る指導者がいる。不動の4番打者、横浜DeNAベイスターズの筒香嘉智選手(25)の兄で横浜市立老松中野球部顧問の裕史さん(35)だ。決戦を前に、「思い切り楽しんでやって、野球の魅力を伝えてほしい」と願いを込める。

 

「たまたまバットにボールが当たっているだけの部分もありますよね。ホームランの後の打席ではちゃんと集中できてないな、とか分かるんです」。1、2次リーグで3本塁打、8打点と爆発し、日本中が頼もしく思う主砲に対しての感想が10歳離れた兄らしい。

 

老松中の保健体育科教諭になって7年。WBCの前回大会を制した中米のドミニカ共和国のスタイルを取り入れ、子どもたちが楽しめる野球の指導に熱を注いでいる。嘉智選手は一昨年オフに、同国のウインターリーグに参加し話題を集めたが、裕史さんも2015年夏に同国に滞在し、指導法を学んだ。

 

現地では、中学生レベルでも鮮やかなグラブトスを披露する技術の高さに驚き、勝ち負けよりもプレーを楽しませて選手を伸ばす指導に共感した。「みんな自由な発想でプレーしていた。試合の合間には木に登ってマンゴーを取って食べたり…。日本の良さにドミニカの良さを足して、野球を嫌いになってしまう子どもを減らしたいんです」

 

老松中の練習でも、ドミニカ共和国流のボール回しなどを取り入れ、2年生の渡邊喜輝主将は「最初は戸惑ったけど、自然といろんなグラブの使い方ができるようになった。野球がより楽しくなった」と話す。

 

裕史さん自身も和歌山での小学校時代には楽しかった野球が、中学の硬式チーム、強豪高校、大学と上がるにつれ、「三振したら…」「ミスしたら…」とマイナス思考になり、苦しみに変わってしまったという。

 

そうした苦い経験から「弟には野球を楽しませてやりたい」と大学卒業後、実家のガソリンスタンドを手伝いながら、硬式野球を始めた中学生の嘉智選手のサポートに回った。練習場は近所の田んぼに建てたビニールハウス。毎放課後に嘉智選手と友人たちが集まった。「体操とかトランポリンとか遊び感覚。『巨人の星』みたいに、特訓したわけじゃないんです」。そうして培われたおおらかさが嘉智選手の基礎となり、横浜高校での高度な指導で才能を開花させたという。

 

準決勝の相手は、ドミニカ共和国を破った米国。以前のシーズンオフ、その舞台となるドジャースタジアムを訪れた嘉智選手から、満面の笑みの写真が送られてきたことがあった。「憧れの地でプレーできることは、すごく楽しみだと思う。弟が打って勝つのが一番ですけど、結果を気にせず、三振でもいいので思い切りやってほしいですね」