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(写真・神奈川新聞社)

 

川崎市川崎区の京急線八丁畷駅近くの「京急川崎第1踏切」で、男性2人が電車にひかれ死亡した事故は15日で1カ月が経過した。事故では運転士に異常を知らせる踏切の非常ボタンが使われていなかったことが分かっており、京急電鉄は非常ボタンのデザイン変更や啓発イベントの実施を検討、周知に力を入れ始めている。記者も実際に非常ボタンを押してみると、コツがあることが分かった。

 

「毎日踏切にいるからボタンの存在は知っているが、一般的に意識している人は少ないのでは」。路線バスの誘導員として、現場の踏切前で4年ほど前から働いている男性(65)はそう話す。

 

事故発生時、休憩中だった男性は「もし周囲に人がいたならボタンを押してほしかった」と悔やむ。自身も踏切内で酒に酔った人が倒れているのを見つけ、押した経験がある。

 

「泥酔者はすぐに立ち去ってしまったが、係員に事情を説明し、数分で(電車は)復旧した」と振り返り、こうも指摘した。「意外とボタンが固くて、3回ほど試してやっと押せた」

 

■親指で体重掛け

 

「戻らなくなるまで強く押して下さい」との注意書きがある非常ボタンは、どれほどの固さなのか。京急電鉄の金沢検車区(横浜市金沢区)を訪ね、訓練用線路に設置されている非常ボタンを実際に押してみた。

 

20代の女性記者が人さし指で押してみたが、力を入れてもなかなかへこまない。親指に変え、ほかの指で非常ボタンの外枠をつかむようにして体重を掛けると、ようやく押せた。

 

京急の担当者は「誤作動防止などである程度の固さがある」とした上で、「女性やお年寄りには少し固いかもしれない。親指を使い、ガチャンと音がするまで中に押し込んでほしい」と説明する。

 

ただ、タイミングによっては非常ボタンを押しても間に合わないケースもある。担当者は「ボタンを押した後も決して踏切内に入らず、係員が行くまで待ってほしい」と強調する。

 

■賠償請求はない

 

非常ボタンを押して電車を止めると、高額な損害賠償を請求されるのでは-。使用をためらう理由としてそんな声もあるというが、担当者は「いたずらを除き、非常事態で押された場合に損害賠償を求めることはないので安心してほしい。監視カメラもあるので、後からでも状況は確認できる」と呼び掛ける。

 

京急は今回の事故を受け、今月下旬から全90カ所の踏切にある非常ボタンのデザインを変更。英語表記を加えて、反射材で夜でも目立つようにし、位置を矢印で示す看板も新設する。現在、車内アナウンスで非常ボタンの活用を呼び掛けているほか、行政や警察と協力した啓発イベントの実施も考えている。

 

京急ファインテック久里浜事業所(横須賀市)で28日に開かれる「京急ファミリー鉄道フェスタ」でも、非常ボタンの操作体験ができる。フェスタの問い合わせは事務局・電話03(5275)5912。

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