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(写真・神奈川新聞社)

 

日本の生態系を壊す「外来生物」を食べて、問題を考えるきっかけに-。そんなコンセプトを掲げるユニークな居酒屋が横須賀市汐入町にオープンした。メニューには、水生生物や水草を根こそぎ食べるアメリカザリガニやコイが並び、ソースに絡めるなど食べやすくアレンジ。2カ月の期間限定の営業で、経営するNPO法人「三浦半島生物多様性保全」の天白牧夫理事長(31)=同市阿部倉=は「まずは目に触れることで外来生物の問題を知ってほしい」と話している。

 

ザリガニの身をバジルソースで炒めた「ジェノバ風」に、コイの切り身を使ったピリ辛の「麻婆鯉(マーボーゴイ)」。中でもジェノバ風はザリガニ丸々1匹が“飾り”として添えられ、見た目のインパクトも絶大だ。「ザリガニは思ったよりも臭みがなくてぷりぷり。コイも柔らかい」。来店していたカウンセラーの女性(65)が笑顔を見せる。

 

環境省によると、日本の野外に生息する外国起源の生物は分かっているだけでも約2千種。中でも生態系に大きな影響を及ぼすものは「侵略的外来種」と呼ばれ、最近では「ヒアリ」が注目を集める。北米原産のアメリカザリガニも昭和初期に日本に持ち込まれ、分布を拡大。川や池などで泳ぐ姿がおなじみのコイも、国際自然保護連合(IUCN)の「世界の侵略的外来種ワースト100」に選ばれている。

 

同法人も普段は谷戸の田んぼを再生させ保全する活動を中心に行うが、「本当はトンボが飛び回ったり、ゲンゴロウが泳いでいたりという環境を目指していたのに、『外来生物だらけ』になることがある」と天白理事長。「生物を殺すことはつらいことなのでやりたくはないが、やらざるを得ない」と頭を悩ませる。

 

駆除した生物は研究機関に検体として送るなどの方法はあるが、「一つの選択肢として『食べる』があってもいいのでは」と、空いていた知人のビルの1階部分を借りて8月中旬に開業。2カ月の期間限定にちなみ、店名は「ふたTSUKI」とした。水質検査で問題がないとされた横須賀市内の池などで駆除したものを使い、味付けを濃いめにして特有の臭みを消した。

 

「本当は市民一人一人が避けては通れない問題。当事者意識を持って関わってもらえれば」と天白理事長。「今は里山活動をしている人が店に来る、という流れだが、ゆくゆくは店に来た人が『こんな大事なことがあるんだな』と思って、活動に参加してくれたらうれしい」と話す。

 

店では同法人が横須賀市内で栽培するトウモロコシやナスといった無農薬野菜のほか、自家製の甘酒や梅ジュースなども提供する。10月17日までで、営業時間は火、木、日曜日の午後6~11時。問い合わせは、同店・電話070(5563)5190。

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