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(写真・神奈川新聞社)

 

横浜市立大学(横浜市金沢区)とIT大手ディー・エヌ・エー(DeNA)のヘルスケア子会社「DeNAライフサイエンス」(東京都)が、人工多能性幹細胞(iPS細胞)を活用した「非アルコール性脂肪肝疾患」治療の共同研究に乗り出した。

 

同疾患は、飲酒しなくても起きる脂肪肝で、肝硬変や肝臓がんなどにつながりやすいリスクが指摘される。自覚症状がないことが多いとされ、対策に不可欠な早期発見が難しい。同大によると、患者は日本人のおよそ1~3割とも言われ、増加傾向で推移しているという。

 

共同研究では、DeNAライフサイエンスの会員向け遺伝子検査サービスを活用し、この病気に関連する遺伝子を持つ人から血液の提供を受ける。これを基に、横浜市大がiPS細胞を作製。さらに、病因解明などに用いる「ミニ肝臓」を構築して、早期発見の指標となる物質の把握や、治療薬の開発につなげる。iPS細胞を活用したミニ肝臓の構築技術は、同大医学群臓器再生医学の武部貴則准教授を中心とした研究グループが確立した。

 

すでに、DeNAライフサイエンスが昨年末から、同疾患関連の遺伝情報の抽出作業を開始している。2017年度中に遺伝情報の解析やiPS細胞の作製を行い、18年度以降に生体内の肝臓に近い「ミニ肝臓」を用いた検証に着手する計画だ。

 

同大准教授は「人を対象とした臨床研究は、個人で生活習慣が異なることが障害になり、ゲノム情報と疾患発症の因果関係の立証が極めて困難だった。しかし、共同研究ではiPS細胞により同じ培養条件下で疾患を再現できるため、因果関係を正確に検証できる」と期待する。

 

高齢社会の課題解決や健康増進につながる先進的な研究開発事業を支援する横浜市の助成金約970万円の交付も決まっており、同大教授は「重篤化する前段階で発見できる方法の確立を目指す。20年を目安に検証を進めたい」としている。

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