(写真・神奈川新聞)
逗子市で2012年に起きたストーカー殺人事件で、元交際相手に刺殺された三好梨絵さん=当時(33)=の住所を当時の市職員が加害者側に漏らしてプライバシーを侵害したとして、梨絵さんの夫(47)が市に慰謝料など1100万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が15日、横浜地裁横須賀支部であった。前澤功裁判長は、市側の過失を認め、110万円の支払いを命じた。
前澤裁判長は判決理由で、梨絵さんの夫を装った調査会社の男に市職員が情報を漏らしたことは、地方公務員法上の守秘義務違反やプライバシー侵害に当たると認定。ストーカー被害を受けて、住民基本台帳の閲覧制限を申し出ていた梨絵さんの住所は「生命身体の安全に関わる重要な情報」などとして「被害者が受けた精神的苦痛は多大」と結論付けた。
一方、情報漏えいと殺人事件の直接の因果関係については「加害者の故意による殺害行為が介在している」と指摘。情報を漏らした市職員は「相手方の真の目的を知らなかった」として、慰謝料は100万円にとどまるとした。
判決などによると、元交際相手の男=当時(40)=は11年3月ごろから梨絵さんに「殺してやる」などとメールを送り、同6月に脅迫容疑で逮捕された。男は執行猶予付きの有罪判決を受けた後、12年11月に調査会社の男=偽計業務妨害罪などで有罪=を通して梨絵さんの住所を入手。翌日、自宅に押し掛けて梨絵さんを刺殺し、男もその場で自殺した。
夫は16年10月に提訴。市側はプライバシーの侵害を認めつつ、情報漏えいと梨絵さん殺害の直接的な因果関係を否定し、請求された賠償額について争う姿勢を示していた。
◆逗子ストーカー殺人事件 2012年11月6日、逗子市のアパートで、セミナーコーディネーターの三好梨絵さん=当時(33)=が、元交際相手の男=同(40)=に刺殺され、男もその場で自殺した。男は事件前に大量のメールを送信していたが、当時のストーカー規制法では執拗(しつよう)なメール送信は「つきまとい」に当たらないとして摘発されず、事件をきっかけに法改正された。