(写真・神奈川新聞)
県教育委員会は15日、すべての県立高校(中等教育学校含む)で、部活動に週2日の休養日を設けると明らかにした。教員の働き方改革の一環で、年間を通して週平均2日以上に相当する休みを盛り込んだ指導計画を策定し、4月からの適用を目指す。部活動顧問の負担軽減とともに、生徒の健康維持が狙いだが、強豪ひしめく神奈川の部活動のあり方に一石を投じる形になりそうだ。
県教委が2017年度に実施した部活動基本調査によると、週当たりの平均活動日数は運動部で5・2日、文化部で2・9日、休日に休養日を設けていない運動部は38・6%に上った。これを受け、昨年12月、有識者による「県立学校教員の働き方改革にかかる懇話会」を設置。教員へのヒアリングを重ね、部活動のあり方の見直しを進めてきた。
教育長は「適切な休養を取ることで生徒のバランスの取れた成長を促すとともに教員の負担を軽減するため、部活動指導のあり方を見直す」と説明。オフシーズンにまとめて休養日を設定することを可能にするとともに併せて、大会への引率が可能な部活動指導員を10校に配置し、効果を検証する。
教員の働き方改革を巡っては、文部科学省が昨年12月に緊急対策を発表。スポーツ庁も先月、運動部活動で「休養日を週2日以上設定」するなどの指針案を提示し、高校も準用するよう求めていた。
また、教育長は「教員の働き方改革の総合的、抜本的な方策を取りまとめ、神奈川の教育全体の質の向上を図る」と強調。市町村立学校に対しても、学識者や市町村教育委員会、教員、PTAなどで協議会をつくる意向を示した。
同日の県議会本会議で、嶋村公(自民党)、滝田孝徳(かながわ民進党)両氏の代表質問に答えた。
「専門外の部活動に独学で当たっているケースが多く、教員たちは心身ともに厳しい環境に置かれている」。横浜市内の県立高校に勤務する50代の男性教員はこう指摘する。
県立高校で部活動は「自発的勤務」として扱われてきたという。男性教員は「休みも取れずに疲弊する教員も多い。働き方改革の議論が活発化する中、ようやく学校の部活動にも焦点が当たった」と歓迎する。
ただ、のちのプロ選手や五輪選手を育てた県立高校の名伯楽も少なくない。
「消極的に受け持つ顧問がいるのは事実だが、機械的に週2日は休みにしろというのは部活動に必死に取り組む子どもたちを裏切ることになるのでは」。スポーツで全国大会に導いた経験がある県立高校の男性教員は憤りを隠さない。
県立のみという方針にも疑問を投げ掛ける。「神奈川には市立も私学もある。練習量で差が出てしまうのは明らか」。スポーツには勝敗を通じた人間教育の側面もあるだけに、強豪校からは困惑の声が聞こえる。
30年以上にわたり指導に携わってきた別の男性教員は“県立”の地盤沈下を憂え、ため息を漏らした。「運動部が盛んな学校として活気が出てきたのに、この方向で進めば魅力ある県立校がなくなってしまう」