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ロープ付きの重機を運ぶトレーラー=8日、沖縄県東村高江の米軍北部訓練場メインゲート付近(写真・琉球新報社)

沖縄県の東村と国頭村に広がる米軍北部訓練場のヘリパッド建設工事で、沖縄防衛局は9日にも工事用重機を民間の大型特殊ヘリで運搬する。防衛省は抗議する市民を排除した上で建設現場の「G地区」「H地区」に重機を運び入れることも検討していたが、東村から混乱を避けるために村道を使用しないよう求められたことも重なり、空輸という“最終手段”に踏み切る。来年3月からはノグチゲラの営巣期で6月末まで工事を中断しなければならず「なんとしても2月までには工事を終えたい」(防衛省関係者)との焦りが背景にある。

 

市民の激しい抗議運動に直面する中で、工事の進捗(しんちょく)を左右する重機を空輸する政府の手法は、文字通り頭越しの対応となる。

 

2年ぶりに再開した移設工事について、政府は県外から約500人の機動隊を投入し、反対運動に対峙(たいじ)してきた。ノグチゲラの営巣期に入る3月から6月末まで工事を再度停止した場合、「いったん県外に戻った機動隊をもう一度派遣するなど労力と費用の負担が大き過ぎる」(防衛省関係者)ため、一気に工事を進めたい考えだ。

 

現場では政治的に中立を求められる警察が工事の作業員を基地内に輸送する事態も発生している。政府は重機の空輸に陸上自衛隊ヘリを投入することも検討しており、“本来業務”を逸脱するような形で、あらゆる機関が工事に投入される事態となっている。

 

ただ自衛隊ヘリによる重機輸送は、当事者の自衛隊からも抵抗が強い。ある防衛省関係者は「陸自は沖縄に配備された当時は反対運動に直面したが、不発弾の撤去や急患輸送などで少しずつ支持を得てきた部分もある。工事に協力すれば『米軍との一体化』などと批判の矛先が向かいかねない」と吐露する。「陸自は宮古島と石垣への新たな配備も計画している」(同)中で、県民の反発が強い米軍施設建設に協力することで、批判が飛び火する政治的リスクを避けたいのが本音だ。

 

県は北部訓練場の部分返還につながるとして、ヘリパッドの移設自体には反対していない。ただヘリパッドで県が配備に反対しているMV22オスプレイが運用されることや、機動隊を大量投入する形の工事は県民との対話を遮断するとして「政府の強引な手法には反対だ。オスプレイ運用の疑問も残り容認できない」(県幹部)と批判してきた。

 

一方、ヘリによる重機輸送について県は「現段階でどのような影響が出るかは分からず、地元東村と国頭村の意見も参考にする必要がある」(別の県幹部)と静観の構えで、今後の成り行きを注視している。 (島袋良太)

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