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イシン・ホテルズ・グループから森トラストへ転売された「シェラトン沖縄サンマリーナリゾート」(写真・琉球新報社)

 

昨年、世界的なホテルブランドに刷新したばかりの「シェラトン沖縄サンマリーナリゾート」(恩納村)の所有と運営権が、国内不動産開発大手の森トラスト(東京)に転売された。外資系のホテル運営会社イシン・ホテルズ・グループ(東京、マイケル・ニギッチ社長)は沖縄観光が復調した2013年以降、沖縄で所有するホテルを相次いで売却。老朽物件をリニューアルし、不動産価値を上げた上で取得時よりも高値で売却するホテル再生の手法であり、非公表となっている今回の取引額については「210億円に近い水準とみられる」と全国業界誌でも関心を持って報じられている。

 

イシンは国内経済に大打撃を与えた2008年の世界的金融危機(リーマン・ショック)以前から、沖縄で複数のホテルなどを取得してきた。最盛期には、沖縄ポートホテル(元沖縄不二ホテル、現ネストホテル那覇)やグランドオーシャン(元沖縄オーシャンビューホテル、現沖縄ナハナ・ホテル&スパ)の那覇市内の老舗のほか、ルネッサンスリゾートオキナワ(恩納村)、ココガーデンリゾートオキナワ(うるま市)といった施設の土地、建物などを所有していたが、現在までに全て手放している。

 

今回、売却の対象となったシェラトン沖縄サンマリーナリゾートも、1987年に開業した築30年の老舗ホテル。イシンが2006年に買収してホテルを運営し、15年末からは約40億円を投じて増築工事に着手。老朽化していたホテル本体も大幅に改修し、昨年6月にシェラトンホテルとしてリブランドした。

 

日経不動産マーケット情報(東京)は、イシンがサンマリーナリゾートを取得した当時の価格は約80億円で、今回、森トラストへの売却額は200億円超に上ったとの見方で報じた。森トラストの沖縄のホテル市場への参入について、同誌は「2月に森トラスト・リート投資法人の上場を予定しており、一連の取り組みを通じて盛り上がる宿泊需要の取り込みを図っている」と分析している。

 

売却価格や今後の沖縄での展開について、イシングループは本紙の取材に「担当者が不在」として現在まで回答はない。ただ、所有ホテルや運営権の売買はイシングループに限らず、ここ数年、沖縄で活発になる取引だ。海外では当たり前だった「ホテルの所有と運営の分離」も、ここ数年急速に進んでいる。

 

■「所有と運営の分離」

 

米投資会社モルガン・スタンレーが運用する不動産ファンドの関連会社は、15年に那覇市旭町のホテル「リーガロイヤルグラン沖縄」の所有権を金秀本社(那覇市)から買収した。こちらも同様に売却額は非公表だが、金秀関係者によると、「(モルガン社は)予想を上回る金額を提示してきた」ため、最終的に売却を決めたという。

 

ホテル役員の経歴などを持つ琉球大学観光産業科学部の上地恵龍客員教授は「外資系企業は所有するホテルの運用期間を3~8年とする。転売のため、ブランドの刷新や改装するなどして価値を高めていかないといけない」と説明する。その上で「近年、沖縄への外国人観光客が増えたため、(ホテルの)転売や取得するタイミングがやってきている。売買が動いているのは沖縄にとっても良い話だ」と指摘した。(呉俐君)

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