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6日に続く米軍ヘリ不時着を受け、記者の質問に答える沖縄県の謝花喜一郎知事公室長=8日夜、県庁

 

「異常を通り越して、もう何と言えばいいのか」。3連休の間で2度の不時着。沖縄県幹部は一報を耳にした際、数秒間言葉を失った。県は10日に富川盛武副知事を上京させるなどし、県内にある全米軍機の総点検と飛行中止を政府に改めて求める。

 

県は昨年12月に宜野湾市の普天間第二小学校に米軍ヘリの窓が落下する事故が起きた際にも同様に求めた。しかし政府は県の訴えを「ロジックが分からない」(山本朋広防衛副大臣)などと一蹴した。今回の不時着の続発は政府の現状認識の甘さ、危機感の薄さが招いた事態ともいえる。

 

「What’s going on?!(一体、どうなっているんだ?!)」。富川氏は8日夕、電話で在沖米軍トップのローレンス・ニコルソン四軍調整官に事態の説明を迫った。午後6時40分ごろ、ニコルソン氏が電話で富川氏に読谷の不時着事案を報告した。ニコルソン氏はこれまでも米軍機のトラブルが発生する度に富川氏に電話してきた。しかし大半は客観的な事実を伝えるだけの「報告」どまり。しかしこの日は違った。

 

「大変申し訳ない」。ニコルソン氏は謝罪の言葉を口にし、さらに頻発する不時着に「クレイジーだ」と漏らし、いら立ちをにじませた。富川氏は米軍機によるトラブルが相次いでいることを指摘し今後、詳細な説明をするよう求めた。ニコルソン氏も「必ず説明する」と約束した。

 

◇矮小化

 

「なぜ一昨日のニュースをまたやっているのか」。政府関係者の一人は、読谷の不時着を報じるテレビニュース見て、2日前に起きた伊計島の不時着事案だと誤解した。読谷で新たに発生した事案だと気付き絶句した。「官房長官も名護入りするなど政府を挙げて名護市長選に力を入れている最中に」と顔をしかめた。

 

「操縦士や搭乗員。彼らがしっかりすること、これが全ての基本だ」。小野寺五典防衛相は8日夜に出演したテレビ番組でこう語った。米軍機の事故が相次ぐ中、機体の安全性や米軍の組織的な問題ではなく、操縦や整備に当たる米兵に事故原因を矮小(わいしょう)化させた格好だ。

 

相次ぐ米軍機のトラブルについて、防衛省関係者は日本を取り巻く厳しい安全保障環境などにより訓練が激化している点や機体の老朽化などを挙げるが、原因は分かっていない。そんな中、来月の名護市長選など選挙イヤーを迎えた沖縄で事故が頻発している。政府・自民党関係者は「伊計の次は読谷か。あまりにも米軍の事故が多すぎる」と広がる波紋に危機感を募らせた。

 

◇最低限

 

今回不時着したAH1ヘリはちょうど1年前、伊計島に不時着したものと同型機。AH1ヘリのほか、CH53ヘリ、MV22オスプレイ、UH1Yヘリ。この1年だけでもあらゆる県内米軍基地所属機のトラブルが続いている。嘉手納基地に飛来している外来機の部品落下も起きた。県は全機の総点検と飛行停止を求めているが、実施に当たっては米軍の運用も踏まえた上で一斉実施には固執せず、裁量の余地を与えている。

 

これは、県が必要最低限かつ実現可能なものとして要求していることを意味する。最初から実現できそうにない無理筋の要求を投げているわけではない。

 

政府が1カ月前に取り合わなかった全機点検、飛行停止の要求は「生命が脅かされている」(謝花喜一郎県知事公室長)との不安を抱く県民にとっては切実で、最低限の訴えだ。「政府にはその一歩を誠意を持って示してほしい」。謝花氏は怒りで震えそうになる声を抑えながらこう力を込めた。

(仲井間郁江、仲村良太)