航空券の買い方を詳しく説明する沖縄ツーリストの社員=16日午後、豊見城市豊崎 画像を見る

沖縄県内の旅行大手の沖縄ツーリスト(OTS、那覇市、東良和会長)が消費者向けにインターネットでの航空券の買い方教室を無料で開催している。旅行会社の象徴的な収益業務と言える航空券の販売だが、その業務に割かれた時間を減らし、高付加価値商品の提供などに比重をシフトさせる狙いがある。旅行会社の業務の在り方に変革をもたらしそうだ。7月からはauショップでのスマートフォン教室とコラボレーションして購入方法を伝授するなど、買い方教室は広がりを見せている。

 

■手取り足取り

 

16日午後、那覇空港に近い豊見城市豊崎の貸し会議室で航空券の買い方教室が開かれた。教室では沖縄発着の国内航空会社6社分の資料を準備している。OTSの社員はこの日、受講者向けに格安航空会社(LCC)のバニラ・エアの航空券をインターネットで予約・購入する方法を説明し始めた。

 

LCCと日本航空、全日空などのフルサービスキャリア(FSC)の違いから説明。「料金は毎日変わる」「LCCはFSCよりも座席の間隔が小さめ」などと具体例を交えて話す。バニラ・エアは受託手荷物や座席の位置、予約変更の可否などによって運賃が細かく変わることを紹介した。その後、実際にスマホで予約サイトを開き、購入するまでを手取り足取り教えた。

 

教室は約2時間で終わった。OTSはその他の旅行商品を紹介することもなく、純粋に航空券の買い方を教えただけ。参加した70代女性は「実家の石垣によく帰るので、絶対に習いたいと思った。これで安く買えそう」と語り、満足げに帰っていった。

 

健康経営推進室の玉村美智子マネージャーは「これでいい。会社で教室を開こうとしたが、商売っ気が出てしまう。それを避けたかった」と語る。

 

■ビジョン

 

直接的に会社の収益につながらないように思われる教室だが、OTSは明確なビジョンを描いている。

 

現在、ネット環境の整備が進み、航空券やホテルの予約はスマホなどで簡単にできるようになっている。航空券を直接購入することによって、消費者としては旅行会社で買う場合にとられる手数料がない分、安価で購入できる状況にある。

 

一方、高齢者らスマホの利用に慣れていない人はその恩恵を受けることができず、旅行会社に支払う手数料が加わることで割高感を与えてしまっているという。また、航空券販売によって航空会社から旅行会社に支払われる販売手数料も低減し、現在は2・5%程度に落ち込んでいる。航空券のみを販売するメリットが低下している。

 

その中で東会長が「教室開催を」と提案。それを受けて昨年10月に初開催した。16日までに16回開催し、延べ120人程度が受講した。7月からはauとコラボしていることもあり、今後はさらなる参加者増加を見込む。

 

これにより航空券販売の比重を低下させることで、今後は着地型商品やバスツアー、アレルギー対応型ツアーなど高付加価値商品に注力する方針だ。OTSが描くビジョンの通りに進めば消費者にとってはお得に利用でき、航空会社も適切な運賃設定や購入者の消費データ蓄積につながる。結果的に顧客満足度を上昇させ、収益性も向上するという算段だ。

 

業務改善室の伊禮和之室長は「航空券の販売だけでずっとやれるとは思っていない。高付加価値のツアーにもっと社員をシフトしていきたい」と展望を語った。

 

(仲村良太)

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