名護市辺野古区(2016年撮影、資料写真)

 

【名護】米軍普天間飛行場の移設問題を巡り、防衛省から個別補償を拒まれた名護市辺野古区では、上京して直談判する動きや、移設の是非を問う区民投票を求める案も浮上している。移設受け入れ条件の大きな柱が崩れることへの衝撃は大きく、区民からは「思わせぶりな態度で期待させてきたのか」と政府不信が渦巻く。「地元の地元」が掲げてきた「条件付き容認」の土台は、大きく揺らいでいる。

 

防衛省の方針を伝えられてから約1週間後の8月9日。辺野古区の役員らは市役所を訪ね、渡具知武豊市長に要請書を手渡した。

 

再度要求

 

要請書に明記された「基地がある限り1世帯当たり永続的な補償」「区民に対する見舞金の実施」などの項目は、区が2014年4月に政府に提出した「辺野古区の条件」とほぼ同じで、一貫として要望してきた内容だ。これに対して、渡具知市長は本紙取材に「個別補償に関して詳細なことを聞いていないので、お答えできない」と述べるにとどめた。

 

区への個別補償は06年4月にさかのぼる。V字形滑走路を建設することで政府の協議がまとまったことを受け、「1世帯1億5千万円」とする要求をまとめた。07年5月には、行政委員会が1999年に採択した基地建設反対決議を撤回。2010年には「条件付き移設容認」の立場に転じた。その後も区はことあるごとに、金額こそ盛り込んでいないが個別補償に応じるよう求めてきた。今回、防衛省は補償に応じない理由として「法的根拠がない」ことを挙げたが、これまで補償実施に含みを持たせ、はっきり断ったこともなかった。

 

思わせぶり

 

9月22日、行政委員会を前に区民約15人が集まり、率直な意見が交わされた。「政府は思わせぶりな態度を取ってきて、確定したものはない。この地域は選挙のたびに振り回されてきた」。辺野古商工会会長を務める許田正儀さん(69)は語気を強めた。商工会理事の玉利朝輝さん(59)も「他が断った基地を受け入れるわけだから、補償を求める権利はある」と指摘した。一方で「てこ入れは政府でしかできない」とする現実的な声もある。

 

20年余、辺野古区は国策に翻弄(ほんろう)されてきた。政権や県政、市政が交代するたびに政治環境も目まぐるしく変化し、県や市との交渉が難航すると政府は区に直接接触し「思わせぶりな態度」をちらつかせて懐柔を図った。個別補償を巡り、区は再び岐路に立たされている。(阪口彩子、當山幸都)

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