「SDGs×ビジネス」で未来を拓く アジアの女性起業家が沖縄で語り合った
(左から)ミャンマーから来県したノウ・エィワさん、ラオスから参加したナウンヌッ・ホッペスさん、東京・岩手を拠点に事業展開する酒井里奈さん、サンゴに優しい日焼け止めの開発・販売を手掛ける沖縄の呉屋由希乃さん、モデレーターを務めたAWSENデザイナーの岡田味佳さん=2018年12月14日、那覇市の八汐荘

 

「アジア女性社会起業家ネットワークサミットvol.0」を沖縄で開催

 

SDGs(エスディージーズ)というワードを、よく見聞きするようになりました。2015年9月、国連本部で採択された「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)=SDGs」には、貧困や飢餓、環境問題の解決など17の目標が掲げられており、一見すると「大きな問題」と捉えられがちですが、実は私たちの身近にある「暮らしのこと」なのです。

 

2018年12月14日、「アジア女性社会起業家ネットワークサミットvol.0」が那覇市の八汐荘で開かれました。テーマは「身近な課題から生み出すソーシャル・イノベーション~女性社会起業家たちと考えるSDGs達成に向けたビジネスのあり方」。ラオス、ミャンマー、東京・岩手、沖縄から集った4人の女性起業家が、起業のきっかけや今後の事業展開、SDGsの達成に向けて起業家の視点で何ができるかを語り合いました。

 

登壇したのは、ラオスで「子どもに安全で美味しいものを食べてほしい」と自宅キッチンから食品加工のビジネスを始めたXaoban代表のNongnut Foppes(ナウンヌッ・ホッペスさん)さん、岩手・東京を拠点に発酵技術を取り入れたバイオマス事業や化粧品開発などを手掛ける株式会社フォーメンステーション代表の酒井里奈さん、ミャンマーで環境に優しい素材でアクセサリーなどを作って販売するAmazingGrace代表のNaw Eh Wah さん(ノウ・エィワさん)、沖縄を拠点に「サンゴに優しい日焼け止め」を開発・販売するジーエルイー合同会社代表の呉屋由希乃さんです。

 

4人は食品加工、化粧品、ハンドクラフトなど、手掛けるビジネスは異なります。食の安全や環境問題など、それぞれが掲げる社会課題のテーマも違います。けれど、国を越え、ジャンルを越えて4人に共通していたのは「自分の大切な人を笑顔にしたい」「自分の住む地域をよくしたい」という、暮らしの問題へのチャレンジでした。

 

4人の活動報告やパネルディスカッションでの発言要旨を中心に、イベントの一部をレポートします。

 

◇仲井間郁江、佐藤ひろこ(琉球新報Style編集部)

 

わが子のためにキッチンで創業 素材をいかした無添加ヨーグルト
ナウンヌッ・ホッペスさん=Xaoban代表(ラオス)

 

オランダ人の男性と結婚し、オランダで生活した時に現地で食べていたヨーグルトが起業のきっかけです。ラオスに移ってからも、子どもがオランダで食べたヨーグルトの味を忘れられず、子どものために家のキッチンでヨーグルトを作り始めたんです。

 

無添加のヨーグルトやジャムの製造が事業の柱です。当初は2人で始めた事業も10、15人と従業員が増え、2004年に会社を設立しました。今は25人の従業員がいます。主な顧客はホテルやレストランです。

 

ラオスでは、都市部から離れた地方では女性はまだ十分な教育を受けられず、家庭の中でも発言権が小さいという問題がある。栄養に関する知識が十分でないため、栄養失調の問題も生じています。

 

新たな価値を生みながら、栄養失調の改善も

 

農家も「量を多く生産したい」という考えが優先で、その農作物をどう活用するかという発想にまでなかなか至りません。とにかく多く、多く、生産したいという考え。そこで私たちが関わって、栄養価が高かったり珍しい果実や野菜の調理方法を提案したり、商品化を考えたりしています。未使用資源の調理法を伝えることで、地方に住む女性や妊婦の栄養失調の改善にもつながっています。

 

会社としてはまだSDGsの課題解決のスタート地点に立った段階です。

 

私たちは「栄養」をキーワードに事業に取り組んでいます。栄養を摂取することで(勉強や就業など)物事に集中でき、いろんな機会をつくることができる、それによってSDGsの目標の1つである「貧困」を減らすことができると考えます。

 

ラオスにはまだまだ未使用の貴重な資源があります。民間組織でパートナーシップを組んで付加価値を付けて活動を広げていくことが重要だと思っています。

生ゴミへの怒りが発端 発酵の力で化粧品開発
酒井里奈さん=FERMENSTATION代表(東京・岩手)

 

大学卒業後は銀行に勤めていましたが、ある時、道ばたに大量に捨てられていた生ゴミに怒りを感じ、「何かできないか」と考えるように。そして約10年働いた会社を離れ、東京農業大学に入学して発酵について学び、起業しました。

 

日本の田んぼは3分の1がちゃんと使われていないと言われています。使われていない資源を活用して収益を上げようと考え、米からエタノールを作り、そこから化粧品などを製造しています。少量多品種にこだわっています。

 

起業して10年。銀行を辞める時には周囲から「本気か?」と言われました。銀行員という肩書きがなくなることを、みんな心配してくれていたんです。でも実際に辞めてみたら何でもなかった。起業するまでより、起業後の方が大変ですが、「辞めたい」と思ったことはありません。

 

自分がやりたいと思ったことを、もし他の誰かがしていたら悔しくて死ねないですから。ただ、私は自分がやりたいことをするのに10年かかりました。「これ」というものが見つかって良かったと思います。

 

無駄なものがない世の中つくりたい

 

「女性」であることはあまり意識していません。「女性」「女性」とは、あまり言わなくて良いのかなと感じています。今自分が手掛けているビジネスは、多くの男性には思いつかなかったビジネスとは思いますが、女性だからできたビジネスとは言われたくないし、思いたくないというのが本音です。

 

私の夢は、発酵で楽しい社会を作ること。世の中に無駄なものがない社会を作りたい。今は米を使っていますが、ひえやぬかから機能性物質を抽出することや、リンゴジュースの絞りかすの活用にも取り組んでいます。

 

「未利用資源ハンター」として、まだ使われていない資源を見つけて、それを世の中の人々が手にとれる商品として形にする役目を果たしていきたいです。

 

寝食忘れるほど好きなこと リサイクル素材でアクセサリー作り
ノウ・エィワさん(ミャンマー)

 

リサイクル素材を使用したアクセサリーを作っています。女性を中心に障がい者を雇用しています。

 

母が医師で、ハンセン病患者の治療をしていました。私も起業する前はハンセン病施設で働いていました。障がいのある人は職業訓練などのトレーニングを受けても、自宅から遠く離れた職場に通うことができないという課題があると知ったんです。

 

そこで自分が起業しようと考えました。母が働いていたこともあり、幼いころからハンセン病棟は自分の庭のような感じでした。障がいのある人を雇用する時も特別意識はしていませんでした。自分よりも早くアクセサリー作りの技術を身につける人もいますから。障がいがあるからと考えるのではなく、「その人がどんな能力を持っているか」に着目していきたいと考えています。

 

私は子どもの頃からアクセサリー作りが大好きで、友達へのプレゼントも買うのではなく自分で手作りしていました。アクセサリーを作っていると寝食を忘れるくらい熱中してしまうんです。最初はアクセサリー作りをビジネスにすると言った時、母には「趣味は趣味として楽しみなさい」と言われ反対されました。でも今は、母も私のことを誇りに思ってくれています。

 

障がいがあってもなくても一緒だと伝えたい

 

最初7人の障がい者でスタートした事業ですが、今は25人の女性たちで担うまでに拡大しました。お客さんがアクセサリー作りを体験できる場所も作りました。これからは、より女性がトレーニングを積み、生活を維持できる場を作っていきたい。「障がいがあってもなくても一緒なんだよ」「ミャンマーの女性たちは品質の高いものを提供できるよ」と示していきたいのです。

 

SDGsの17項目との関連で言えば、「貧困」「飢餓」「教育」「ジェンダー」「陸上資源」に関わりがあると思います。女性に安定した収入の機会を提供することで貧困解決に貢献し、従業員には栄養のある食事を提供するようにしています。聴覚障がいのある子への教育支援も行っています。アクセサリーの素材は雑誌やタイヤなどを原料にしたリサイクル素材なので、環境保全にもつながっていると思います。

 

自分の好きな沖縄にしたいから サンゴに優しい日焼け止めを開発・販売
呉屋由希乃さん=ジーエールイー合同会社代表(那覇市)

 

生まれ育った沖縄を長らく離れて東京やニューヨークに住み、8年ぶりに沖縄に戻ってきたころ、海の中では魚やサンゴは減っているのに観光客は10倍に増えていたんです。

 

座間味島で大好きなシュノーケルをしようと、日焼け止めを塗って海に入ろうとしていたら、ダイバーに「サンゴが死んじゃうよ」って言われたんです。

 

ショックを受けながら調べてみたら、サンゴに優しい日焼け止めが国内に全然なかった。1つだけ見つけたけど、とても高価でした。リゾート地・沖縄だから他の誰かが商品化するだろうと思っていたけど、一向に誰もしないんです。それなら、と滝に飛び込む気持ちで、クラウドファンディングで350万円を集めて起業しました。

 

ただ、実際に商品を作ってもなかなか売れません。お金になるビジネスはすぐに広がるけど、「環境に配慮して」という声は、ビジネスの世界ではとても小さい。でも今すぐに環境に配慮した文化を広めないとサンゴは無くなってしまう。

 

「海がどうなろうとどうでもいいさ~」と言う沖縄には住みたくない。だから、自分の事業は「自分の住みたい沖縄」=「自分の理想郷作り」でもあるんです。サンゴは沖縄だけの問題ではありません。サンゴに配慮した日焼け止めについて、ハワイやパラオでは条例ができました。世界中のリゾート地の問題です。

 

沖縄から「新しい価値」を提案したい

 

私の事業の核は、日焼け止めの販売ではなく「新しい気づき」を提案することだと思っています。沖縄で生まれたサンゴに優しい日焼け止めをタイやパラオなど世界のリゾート地で広めたい。パラオには今、中国からの観光客が入り始めています。アジア人向けのチラシや、多言語で読める紙芝居なども作りました。「今日しか海に入らない」という人でも使い切れるように、1回分の7グラムサイズの販売も始めました。「自然で遊ぶ時は自然に配慮して遊ぼうね」という文化を沖縄から広めていきたい。

 

SDGsを意識して起業したわけではないけれど、17項目のうち「消費・生産」「海洋資源」「パートナーシップでの目標達成」は意識しています。いずれも私1人では達成できないものばかりだからです。サンゴに優しく配慮して遊んでほしい、との思いを共有してくれる仲間や企業の皆さんと一緒に、新しい考え方や価値を広めるためにチャレンジしたいと考えています。

 

アジアの女性社会起業家たちをサポートするAWSEN

 

「アジア女性社会起業家ネットワークサミットvol.0」は、公益財団法人沖縄県産業振興公社と沖縄県が主催し、一般社団法人AWSEN(オーセン=アジア女性社会起業家ネットワーク)が共催し、沖縄県では初めて開催されました。
※AWSEN公式サイトはコチラ→ https://awsen.net/

 

AWSENは2014年、ビジネスを通じて社会課題を解決することを目指す女性社会起業家を支援するために設立され、東京を拠点に活動しています。これまでにアジア諸国の200人以上もの女性社会起業家が国を越えたネットワークを構築しています。

 

AWSEN創設者でもある代表の渡邊さやかさんは、2カ月前にお子さまを出産されたばかり。今回は長野県からSkypeで参加し、AWSENの活動やイベントの意義について紹介してくれました。

 

世界につながる「架け橋」に

 

本イベント終了後には場所を琉球新報社に移して、登壇者と希望者による交流会が開かれました。参加されたメンバーは4人の社会起業家の皆さんと語らいながら、参加者も自ら登壇し、それぞれが挑戦する事業やプロジェクトなどを報告し、交流を深めました。

 

琉球王国の時代からアジアとのつながりが深い沖縄には、「アジアの架け橋」となり得る潜在力があります。沖縄県が掲げる「沖縄21世紀ビジョン」には、「時代を切り開き、世界と交流し、ともに支え合う平和で豊かな『美ら島』」とも記されています。

 

AWSENのデザイナーで、本イベントではパネルディスカッションのモデレーターを務めた岡田味佳さんは、「登壇していただいた女性起業家の方たちの事業は、身近な家族や故郷への愛、自分たちが暮らす社会を少しでも良くしていきたいという想いから生まれていました」と振り返り、「その想いは、私も含め参加者のみなさんにとっても、遠い話ではなく、自分事として捉えるきっかけになり、勇気を受け取ったように思います」と語りました。

 

AWSENと沖縄県産業振興公社をつなぐなど、本イベントの立役者でもある「うむさんラボ」の比屋根隆代表は「沖縄が沖縄らしさ活かし、より良い未来を育むことに貢献する島になってほしい。その一つとして、沖縄とAWSENの皆さんが地域や国を越えて繋がり、学び合う中で、グローバルな女性社会起業家コミュニティーが形成できたら素敵だなと思っています」と本イベントの意義に触れ、「今後も沖縄を基点にサミットを継続していくことで、SDGsが目指す、地球と調和し、豊かさを分かち合える社会、逞しく優しい経済循環のカタチを、沖縄から世界に発信していけるのではないでしょうか」と願いを込めました。

 

※AWSENの活動を紹介する動画はコチラ

https://www.youtube.com/watch?v=S44PVUjzM24