19日に発表された公示地価で、沖縄県内の全用途平均は全国一の前年比プラス9・3%となり、住宅地、商業地、工業地それぞれの変動率も全国最高を記録した。県庁所在地の住宅地平均価格ランキングでは、那覇市が福岡市や神戸市を上回り全国7位に入るなど、実勢価格も上昇している。国内で数少ない人口増加地域で、観光を中心に好調な県内経済を反映しているとも言えるが、急激な上昇に「ひずみ」を懸念する声も多い。
おきぎん経済研究所の県内景況判断は、14年2月以降60カ月連続で「拡大」が続く。ちょうど住宅地と商業地の地価が長い下落を終えて上昇に転じた時期と重なる。當銘栄一研究員は「活況により人、物、金の流れが活発化している。国内外から沖縄の価値が高く評価されて、沖縄でのビジネスの幅が広がっている」と話した。
■活況に投資相次ぐ
東京都心に比べ割安感があり、高い成長力が見込まれる沖縄には国内外から資本が流れ込んできている。
収益性の高いホテル用地や、海外投資家が資産運用目的でマンションを購入する動きもあり価格が上昇している。
県宅地建物取引業協会の知念聡会長は「全国から沖縄に乗り出してきている。5年前に3千万円程度だった物件が、今では5千万円になっている」と変化を実感している。引き合いが強く、取引が出るとすぐに売れるという。
■生活への影響懸念
しかし、急激な上昇は県民生活に影響を与えかねない。毎月勤労統計調査によると、県内の5人以上の事業所の平均賃金(給与総額)は、13年の24万2194円から18年は24万4775円となり、1%余りの増加にとどまっている。一方で住宅地は上昇が始まった14年調査から20%超、上昇していて、賃金増加と地価上昇のペースが乖(かい)離(り)している。
知念会長は「われわれとしては、県民の仕事が安定して所得が多くなることで少しずつ地価が上がっていくのがベストだ。今は急すぎて所得がついてきていない」と危惧する。當銘研究員も地価の上昇が生活コストに跳ね返らないかを心配する。「すぐにではないが所得から消費に回る分が減り、巡り巡って景気を冷やす可能性がある」と話した。
不動産鑑定士の髙平光一氏は、固定資産税の増加に伴い物件のオーナーが入居店舗に家賃値上げを求めた場合に、店舗側が応えきれなくなるのではと懸念する。「特に地元向けの店舗では、好景気でも客は急激には増えづらい。固定費が増えれば店舗が撤退し、高い家賃の払える全国チェーンばかりになる可能性もある」と指摘した。県内地価が今後も急激な上昇を続けるのか、注視される。
(沖田有吾)