希少価値の高い種雄牛「安福久」の血統を持つ母牛=11日、久米島町内 画像を見る

 

希少価値の高い種雄牛「安福久(やすふくひさ)」の血統牛として久米島町で出荷された子牛の一部が、DNA鑑定の結果、安福久の血統とは違う子牛だったことが11日、琉球新報の取材で分かった。一部の人工授精師が規定に反する種付け方法を行い、血統の異なる牛が生まれていたにもかかわらず、安福久として出荷していた。JAおきなわは事態を把握して以降も通常通り競りを続け、バイヤー(購買者)や消費者に公表していなかった。

 

JAおきなわ久米島支店によると、昨年9月以降、計7頭のDNA不一致が発覚している。県内畜産業の信用失墜にもつながりかねない問題で、農家の経営不安も高まっている。

 

同支店によると昨年10月上旬に沖縄市の農家から、11月下旬には伊江島の農家から「血統矛盾」の指摘があった。いずれも久米島町の同じ人工授精師が手掛けた繁殖牛だった。同支店と久米島和牛改良組合(翁長学組合長)は1月下旬にDNA鑑定の実施を決定した。対象は安福久を血統に持つ69頭で、2~3頭以外はこの人工授精師が種付けした牛という。

 

3月上旬から結果が判明し、11日までに2頭が安福久とは違う血統だった。別の人工授精師2人が手掛けた安福久の種付けでも、計3頭でDNAの不一致が判明した。農水省の担当者は「これまでに確認された事例は宮城県の1件だけ」とし、久米島での続発に驚きを示した。

 

久米島家畜市場での競りは隔月で行われ、バイヤーの9割以上が県外から参加する。運営するJAおきなわ久米島支店の松元靖・農産課長は「鑑定結果が出る前に公表すると、余計に不安をあおってしまう」とバイヤーへの説明を避けてきたが、12日以降に告知する方針を決めた。

 

18日の競りには安福久の血統牛が35頭出品される予定で、同支店は「(落札後にDNAの不一致が発覚すれば)購買者に連絡して対応する」という。これに対し、一部の農家から「問題の傷口を広げ、信頼を取り戻すには何十年もかかる。グレーの牛は出すべきではない」との声も上がっている。(真崎裕史、石井恵理菜)

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