青空に赤色が映える在りし日の首里城正殿=2012年9月、那覇市首里金城町 画像を見る

 

2026年度、生まれ変わった首里城正殿はどんなたたずまいを見せてくれるだろう―。昨年10月31日の首里城焼失から30日で半年。今年3月末には再建までの工程表が決まり、新たなシンボルの姿がおぼろげながら見えてきた。キーワードは「防火設備の強化」と「沖縄らしさ」。2度と火災で失わないよう最新鋭の技術を活用し、防火設備を充実させながらも、琉球王国時代から受け継がれてきた技術や素材を生かし、より沖縄らしい建築物を目指す。新たな首里城について決まっていることや今後の県民の関わりについてまとめた。

 

政府は3月27日、2026年度に首里城正殿の完成を目指すことなどを柱とした工程表をまとめた。「首里城復元に向けた技術検討委員会」(委員長・高良倉吉琉球大名誉教授)が3カ月間の議論でまとめた報告を基に作成した。主なポイントを紹介する。

 

■防火設備の強化/スプリンクラー設置へ

 

再建される首里城のもっとも大きな特徴は防火設備が強化されることだ。大きな柱は二つ。スプリンクラーの設置と連結送水管設備の整備だ。2つの装置の導入は政府の工程表にも盛り込まれた。

 

スプリンクラーは場内に展示する文化財や装飾品が、スプリンクラーヘッドの故障によって水浸しになる恐れから導入を懸念する声もあった。今回、導入が求められているのは「予作動式」だ。従来のスプリンクラーはヘッドが何らかの理由で破損すると放水されることがあった。

 

しかし、「予作動式」は通常、ヘッド付近まで水が入っておらずヘッドが破損しても水は噴出しない。ヘッドと火災感知器は連動しており両方が作動すると、加圧された水が噴き出す。

 

今回の火災では首里城の城郭内に消防車両が進入することができず、城郭周囲から消防隊がホースを長距離にわたって延長する必要があった。連結送水管は建物内部に配管設備と放水口を設けるため、建物内部から放水ができるようになる。ホースを長距離にわたって延長する必要もなくなり消火にかける時間を短縮することができる。高層ビルなどで利用されている。

 

■材料、職人の確保/国産ヒノキ中心に使用 漆は中国産調達へ

 

工程表によると、首里城正殿の丸太は国産ヒノキを中心に使い、カナダヒノキや台湾で伐採が禁止されているタイワンヒノキも調達できるなら使う。チャーギ(イヌマキ)やオキナワウラジロガシは従来使われていたと推定されており「沖縄らしさ」のこだわりから活用を望む声もある。希少材のため、調達可能かどうか調査を続ける。

 

漆は前回同様、中国産を使用し、城郭内で試し塗りをするなど調合方法は検討する。赤瓦は沖縄本島産の材料を調達する。職人は基本的に県内と本土で確保できると見込んでいる。

 

■前回再建との違い/正殿工事、4年に延長

 

新たな首里城再建に向けた工程表は1992年に復元された前回の設計期間の3年から1年短縮し2年となった。

 

前回の設計資料が残っていることから大幅な前倒しを期待する見方もあったが、防火対策の強化に要する設備整備にかかる期間が見込まれた。

 

2022年に着手する正殿の工事期間は前回の3年より1年長い4年となる。周辺の建物がなく作業スペースが十分に確保できた前回に比べ、作業ヤードが限定されるため効率の低下を想定した。材料調達の期間は木材の乾燥期間も含み2年とされた。

 

■県民の支援/寄付続々 総額37億円超

 

国や県、専門家らが一日も早い再建を実現しようと一丸となる中、多くの県民が支援の手を差し伸べている。再建費用に役立ててもらおうと集まった寄付は総額37億円を超えた。県民参加型のボランティア活動も企画され、人々の思いも再建への力となりそうだ。

 

寄付は県や那覇市、豊見城市、マスコミ各社に託された。他にも写真や資料、映像記録を集めるなど再建を側面支援する動きも多様だ。

 

国、県、沖縄美ら島財団は首里城の破損瓦などを利活用する「漆喰(しっくい)はがしボランティア」「首里城かけら探し」「首里城ものづくりイベント」「利活用アイデア募集」を企画した。漆喰はがしボランティアには多くの県民が参加したが、新型コロナウイルス感染症の影響で中止となった。首里城再建に向けても一日も早い感染拡大の収束が期待される。

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