「しんぐるまざあず・ふぉーらむ沖縄」が4月に実施した米や乾麺などを配布する食品お渡し会 画像を見る

 

新型コロナウイルスの感染拡大で全都道府県を対象にした緊急事態宣言が出てから約1カ月。休業や休校などで経済的に厳しい状態に追い込まれている人たちが急増している。特に深刻な状況に陥っているのがシングルマザー、母子家庭の世帯。相談所には「このままでは生活できなくなる」「明日の食料もない」という声も相次いでいる。いま、困窮家庭の子どもや親がどのような状況に追い込まれているのか

 

沖縄の子どもの貧困率は、29・9%(2015年度)で、全国の2倍近い。3人に1人が貧困状態にある。新型コロナを巡る問題以前から社会課題として表面化している。ひとり親世帯では58・9%に上る。中でも母子家庭の貧困率は高く、今回の経済状況が貧困に拍車を掛けている。

 

NPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」が4月に母子家庭を対象に行ったアンケートによると、長引く休校などで仕事に行けなかったり、仕事がなくなったりして「収入が減る」と回答した人は約半数の48・6%だった。「収入がなくなる」と答えた人も5・8%いた。子どもの休校で仕事を休まざるを得なくなった人への支援に充てるとして、政府が設けた休業補償についても「受けた」と答えた人は18・5%と少なく、会社が申請の手続きをしてくれるかどうか分からないために、支援を受けられていない人が多いことも明らかになった。

 

専門家や支援団体からは、休校で学校というセーフティーネットがなくなった上に、県内で広がってきた子ども食堂などの市民によるサポートの場の多くが感染拡大防止のために休止するなど活動を制限されたことで、従来の低所得家庭の生活を支える仕組みが不十分であることが表面化したとの指摘が挙がる。

 

子どもの貧困問題に詳しい沖縄大学の山野良一教授(児童福祉)は「政府は(困窮世帯の)親の就労を促す対策に力を入れてきたが、非正規など不安定な雇用形態の人が多く、以前からの手当や生活費など公的な支援策をもっと充実させる必要性が浮き彫りになっている。ベーシックインカムの導入を検討する時期にきている」とする。今回の事態を「災害時」と同様に扱うべきとし、児童扶養手当など手当のさらなる増額や子どもの学校などを通じてさまざまな支援の情報を流すことの必要性を強調する。

 

児童館を運営する一般社団法人「りあん」の山城康代代表理事は「コロナ以前からぎりぎりだった世帯が追い詰められている。休校で水道料や光熱費がかさみ、明日食べるものもないとの声もある。一度きりではなく継続的な支援をしてほしい」と訴える。

 

コロナ禍は社会の弱者を直撃している。困窮世帯の親子が置き去りにされないよう、国が継続的な支援に取り組むことが強く求められている。

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