永井一郎さん 家でも波平そっくり…妻に命じた“磯野家の掟”

投稿日: 2014年02月06日 07:00 JST

「本当に驚きました。最初の連絡では(夫が)ホテルで倒れたらしいということでした。私は多分酔っ払って、転んだくらいに思ったのですが……」

 声優・永井一郎さんの妻・彩子さん(77)は、東京都内の自宅でそう語った。国民的人気アニメ『サザエさん』の磯野波平役で知られる永井さんが1月27日午前、広島市内のホテルで、虚血性心疾患のため急逝した。享年82。

 逝去の翌々日、弔問の電話がひっきりなしに鳴り響き、所属事務所の後輩声優たちも駆けつけているなか、彩子さんは気丈にも笑顔を浮かべてこう言った。

「年齢も年齢ですから、最近は誰かのお葬式に行くと、『この次は俺だな』とか、半分本気で言ってましたね。病院で長い間苦しんだりするより、急にポックリというのも、本人にとってはよかったのかもしれません」

 結婚したのは’60年。新婚当時、永井さんの給料は約2万円だったという。

「貧乏だったんですよ。古いアパートに住んで、それこそ『神田川』の世界で。2人でお風呂屋さんに行ったりしてね。’64年の東京五輪を前に、公団住宅がどんどん建てられた時代。うちは、申し込んでも当たらなかった。俳優の仕事は収入の保証がないからでしょう。それで、彼は声優の仕事をやるようになったんです」

 声優になってからの給料は月5万円に上ったという。そして38歳から永井さんは、44年間にわたって磯野波平役を演じることになった。結婚生活でも、永井さんは波平さんを地で行くような頑固親父だった。

「彼はね、女性が外に出ていくのがあまり好きじゃないんですよ。古い人間ですからね。波平さんに、もうそっくりですよ。自分の美学のようなものを頑として持っているから、とても太刀打ちできないというか、私がやりこめられますね。だから、このごろは何でも『はい、はい』といって、『おっしゃるとおりです』といってたんです。私は、おフネさん(波平の妻)といっしょです」

 “女性は家庭を守るべき”という磯野家のルール。波平さんを演じた44年間、永井さんは実生活でも実践していたようだ。10年前にこの自宅を建てたころ、街の町内会報に永井さんはこんな一文を寄稿していた。

《サザエさんは理想の家族と言われております。昔はそうも思わなかったのですが、こんなひどい世の中になりますと、なるほどと思うようになりました。ワカメは電車の中で化粧をする女にはならないでしょう。カツオも母校に火をつけたりしないと思います。タラちゃんも登校拒否にはならないと思います。家族互いに気遣いながら、200年でも300年でも、理想の家族を演じ続けるつもりです》

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