山本周五郎賞ノミネートの押切もえ 支えてくれた亡き恩人の言葉

投稿日: 2016年05月27日 06:00 JST

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「僅差と聞いて本当に嬉しかったというのが、正直な気持ちです。たしかに、もしかしたらと期待していた部分もありました。でもノミネートさせていただいただけでもありがたいことですし、大先生である選評委員の方々から『書き方が丁寧』『二作目とは思えない』など思いがけない言葉までいただいたので……」

 

そう語るのは、押切もえ(36)。彼女の書いた小説『永遠とは違う一日』(新潮社刊)が山本周五郎賞にノミネートされたのは、4月21日。昨年7月に『火花』(文藝春秋刊)で芥川賞を受賞した又吉直樹(35)に続いて芸能人受賞なるかと期待が集まっていたが、5月16日の受賞作発表では僅差で栄冠を逃した。

 

押切といえば『AneCan』で専属モデルを務めるかたわら、’13年に長編小説『浅き夢見し』(小学館)で小説家デビュー。2作目となる本作は連作短編集で、恋に仕事にと立ち止まりそうになる女性の心情を描いている。

 

「1作目は25歳の売れないモデルが主人公なのですが、最初ということで自分が見てきた世界を題材にして書きました。執筆には3年かかっていて、うち2年間は物語を完結できず寝かせていたんです。今回はダメ男との恋愛とか元カレに引きずられる話などを書いていますが、次はもっとしっかりとした恋愛モノに挑戦してみたい。年内にはスタートしたいですね。恋愛モノには自分の感情が絶対入ると思います。ただ書きたいのは今の恋愛よりも、過去に失敗した話とか自分がどう変わったかということなんです」

 

そう語る彼女だが、華々しい経歴の陰には知られざる挫折の日々があった――。

 

「10代の私は、はっきり言って自分の人生を生きていなかったというか……。何ごともふわっとしか考えていませんでした。勉強がものすごく得意でもなく、部活をやってもレギュラーになれない。やりたいことがあっても『きっと無理だろうな……』とあきらめて、ネガティブだったところがあります。本当に何も成功体験がありませんでした」

 

10代のころから『Popteen』や『egg』などで読者モデルとしてファッション誌に登場していた押切。当時から“スーパー高校生”としてカリスマ的な人気を博していたが、本人の評価は意外なほど低かった。

 

「あまり努力もしていなかったので、そのうち仕事もなくなって。パン工場でアルバイトをしながらただただ仕事が来るのを待っていました。でもあるとき、『ネガティブなままじゃ、挫折だけの人生になる』と思って、一歩を踏み出す決意をしたんです」

 

転機となったのは、’01年。『CanCam』の専属モデルに抜擢されたのだ。

 

「編集部へ売り込みに行った時点で、20歳。最後の賭けと思って意気込んで顔見せに行きましたが、『みんな10代からやっている。君は年上すぎる』とハッキリ言われてしまいました。それでも当時の副編集長が電話で『撮影に来てみないか』と誘ってくれたんです。もう必死でダイエットして、雑誌を研究して、貯金をはたいて『CanCam』風の洋服を買って。できることは全部しました。そうしたら少しずつ呼んでくれるようになったんです」

 

専属になった直後には当時の所属事務所が解散。そのため、フリーとして活動していたこともあったという。

 

「その副編集長はことあるごとに私を呼んでくれて、いつも励ましてくれていました。でもある日、亡くなってしまったんです……。もしあの人がいなければ今の私はいないし、諦めたまま人生を過ごしていたかもしれません。この小説も生まれなかったでしょうね。その方はいつも言ってくれていました。『君はもっと変われるよ』と。本当に、今でも感謝しています」

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